森永製菓「チョコフレーク」の製造が来年で終了するとのこと。原因はスマホで、手がベトベトになるので操作がしづらくなりチョコフレークの退場となったそうです。はじめは笑っていましたが、そう言えば私もスーツを着るとき以外は腕時計はほとんどしていないことに気づきました。スマホの影響はジワジワとオジサンにまで及んでいるのです。
はっきり言うとスマホはきらいです。私は地下鉄愛用者ですが、7割くらいの人たちがスマホをいじくっている姿が実に見苦しい。とは言うものの私も時間や天気予報を確認するためにチラホラスマホを見るので人のことは言えませんが・・・。
スマホを使用している目的は様々でしょう。ゲームを楽しんでいる人、人との繋がりを確認している人。調べ物をしている人。
この調べ物については評価しています。Googleで検索すると百科事典が不要となり非常にトクをした気分になります。広辞苑もほとんど使わなくなりました。そう言えば何年か前、医局で広辞苑を開いていたら通りかかった小児科の木村先生に「今どき、まだそんなことをしているんですか?」と言われ、恥じ入りました。
一番きらいな点は、人々が繋がりたがっていることです。フェイスブックやラインなど繋がっていないと不安な人が増えています。でもこうした繋がり方には危険があります。活字として残り、後でしまった!と思っても気分を害した相手が多方面に情報を流し、炎上を引き起こすことがあるからです。ゴメン、あれは誤解だったと言っても後の祭り。
私は院内でのやり取りも電話を利用するのは嫌いです。階段を上り下りしてでも直接相手の顔を見て指示を出すようにしています。さらに言うと私の字はひどい悪字で解説が必要な場合が多々あり、ますます面と向かう必要があります。
現在のスマホは少しでも慣れると字が読めなくても小さな子どもでも簡単に操作できるようになりました。妊婦健診についてきた3歳にもならないようなおチビさんが無心にスマホを操作しているのを見て、はじめは俺よりすごいや!と感心しましたが、色白のいかにもインドア系の顔をしているので、これはヤバイぞ、と危惧しました。
こうした傾向は私の子供達が幼少のころに流行りだしたテレビゲームから現れました。私は明確な教育方針は打ち出してはいませんでしたが、テレビゲームだけは禁止しました。後年、子供達は、あれで良かったと言ってくれましたが、時々、よそのうちではコッソリやっていたようでした。
当院のまわりには、ささやかですが自然が残っていて、虫や草花などがいくらでも見られます。それらをじっと観察する方がスマホの虚構の世界を覗くよりも、情操を育むのにいかに役立つがはかりしれません。おい、そんな物を見ないで外で遊びなさい! とおせっかいを言わずにはいられません。
このあたりへの警告は、新進気鋭の昆虫学者、小松貴さんも繰り返し述べています。『裏山の奇人』、『絶滅危惧の地味な虫たち』、『昆虫学者はやめられない』等々。とくに『絶滅危惧の地味な虫たち』は新書なので値段も安く寝っ転がっても読めるので、最近の私の寝床の友となっています。しかし、小松さんはやっぱり極めつきの奇人で、幼少期から裏山で石をひっくり返してはアリの行動など飽きることなく観察してきて、こうゆう人ばかりでもなあ、と、ちょっと複雑な気持ちになります。
第353回 忙酔敬語 チョコフレークとスマホ