年はとっても嗅覚と聴覚は衰えていません。記憶力はあやしくなりましたが‥‥‥。
煙草を吸っていると本人はもちろん、ご主人が喫煙者だったり職場で吸っている人がいれば臭いでピンと来ます。
本人なら本数まで見当がつきます。
そんな妊娠9か月まで煙草を吸っていたお母さんが健診に来たとき、ほとんど煙草臭が消えていました。電子煙草にしたかと思いきや、ビタボンを吸っているとのこと。
「なに? バカボン?」
「ビタボンです。ちょっと高いけど、一本で500回分吸えます。成分はビタミンで、味はミント、ジャスミン、シナモンなどいろいろですよ。先生も試してみませんか?」
私はもともと吸っていないので必要ありませんが興味はわきました。
この妊婦さんは、もともとニコチン依存ではなさそうなのでスムーズにビタボンに切り替えられたようです。とにかく手持ち無沙汰が解消されたと言うのです。
この「間をとる」という行為は喫煙者にとって重要なことです。
みうらじゅんさんも、中学生男子向けの名著『正しい保健体育』のQ&Aで、
「最近、女性の喫煙者が増えていますが良いことですか?」という問に
「良いことです。ピロートークで、俺のこと愛してるかって訊かれて、返事をしたくないときに煙草は必要です」と答えています。
恥ずかしながら、私、このピロートークという言葉を知らず、この本を紹介してくれた長女に「ピロートークって何のことだ?」と訊きました。
何だか、このQ&Aの間抜けな男になったような気分になりました。
男子向けの本ですが、女子にも好評で、当院のスタッフも面白がって読んでいました。 さて、ビタボンですが、煙草の香りがまったくないので、「間をとる」以外の効果は期待できそうもありません。
開発国の韓国では、ニコチンゼロ、タールゼロ、受動喫煙ゼロ、煙草臭ゼロなど安全性は太鼓判を押されているようですが、そもそも煙草とはまったく違うので、当たり前と言えば当たり前の話です。
電子煙草の発展系アイコスではニコチン10分の1、タールほとんどなし。ニコチン依存の人はこちらを選ぶ可能性が高いでしょう。
ビタボンの売りとして、ビタミンA・B・C・D・EとCoQ10などが摂取できるということですが、そもそも煙としてこれらの物質を摂る必要があるのか?
もう一つの売りであるミントなどのハーブの香りで充分ではないかと考えました。そうなると値段も格安となるはずです。もう一つ踏み込むと何も入っていない水みたい物でもかまいません。私はこれをバカボンと名づけました。
バカボンだったら安全性に関しては誰が考えてもセーフです。
「何も心配することはないのだ!!」
ところで化粧品は100均で販売されている製品で充分とのことです。しかし、何事もプレミアムが大切。バカボンではありがたみが薄れて禁煙につながらない可能性があります。やはりビタボンに軍配が上がるのかもしれません。
第290回 忙酔敬語 ビタボンとバカボン