当院では外来の患者さんを診察室に案内する際、受付番号で呼んでいます。個人情報の問題もありますが、あとどのくらいで呼ばれるか患者さん自身が判断できるからです。それでも患者さんが多いときは呼ばれるまで時間がかかるため、
「あとどのくらいかかりますか?」と確認されることもたびたびです。
比較的年配の患者さんに多いような印象を受けます。
私が認知がかった母を病院に連れて行ったとき、5分ごとに「まだか、まだか」とせかされました。私自身は1,2時間待たされても、ボンヤリと、ここの病院はこうゆうシステムになっているんだなあ、とか、ブログのネタなど考えているのでどうってことはないのですが、オフクロは何も考えることはないらしく、いくらでも時間があるばずなのに「まだか、まだか」と、案内を忘れられているんではないかと心配しているようでした。
本当に忙しいときは、患者さんを待たせてはいけないと、せわしない診療をすることになりますが、こういったことはしないように心がけています。
待ってた甲斐があったと思っていただけないと申し訳ありません。ですからできるだけ「お待たせしました」から始まって、ちょっとしたジョークを交えて(スベることが多々ありますが)、患者さんがニコニコしながら帰っていただくことにしています。
患者さんのなかには「先生、働きづめで大丈夫ですか?」とやさしく気づかってくださる方もいらっしゃいますが、
「忙中閑ありでこんな風に遊びながらやっているので平気平気。心配してくれてありがとうございます」とすましています。
確かにこの方がセカセカするより疲れません。ミスも少なくなります。
ときに患者さんが少ない時間帯もあり、その時はその時でバカ話をして時間をつぶしてしまい、ドサッとカルテがまとめてやって来ると慌てて、「まずい、(ギアを)ロウからセカンドに入れよう」ということになります。
諸先輩のなかにあくまでもロウ一点張りのマイペースでレジェンドになっているK先生がいます。
昔、K先生が地方の中核都市の基幹病院に勤務していたおりのこと。
そこは農業地帯で朝から大勢の患者さんが待っていました。
「ばあちゃん、おはよう。畑の出来はどうだい?」から始まって一人の患者さんにじっくり時間をかけ、本来、昼過ぎで終了する外来が延々と続き、気がつけば日もとっぷりと暮れ、それから午後予定の手術が始まったそうです。まわりのスタッフはたまったものではありませんが、これがK先生の流儀で本人はケロッとしたもの。
K先生は持論を曲げないことで有名です。負けず嫌いというか負けを認めない先生でした。私の柔道部の先輩でもあり、ときどき大学の道場に訪れては稽古をつけてくれました。乱取りで私がK先生をぶん投げて押さえ込んだとき、先生は私の腕の中で「おいおい、そんな力だけの柔道ではいかんな」と注意しました。私は呆れましたが、この出来事で先生の人柄を思い知ったので、それ以後、K先生とは良好なおつきあいをしています。
K先生の生き方は、自分自身にとってはストレスも少なくカラダに大変よろしい。先生は現在も若々しく元気いっぱいです。皆さんもチョッピリ参考にしてみるといいですよ。
第271回 忙酔敬語 忙しい時ほどゆったりと