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第760回 忙酔敬語 領土の拡張

 古代中国では北方騎馬民族の侵入を防ぐため春秋戦国時代から各国が長城を築いていました。秦が統一王朝をなしとげたとき、それらの長城はつがなりましたが単なる石垣みたいな建造物で、現在の煉瓦造りの立派な長城は明王朝の時代に建設されました。

 このように中国は伝統的に守りの姿勢で、領土の拡張をはかることはほとんどありませんでした。一方、遊牧民族は強いリーダーのもとでは、がぜん団結して活動域が広くなるため、モンゴルにチンギスハンが現れると領土はまたたく間にひろがり、ユーラシア全域を支配するようになりました。元もそんなモンゴル帝国の一部でした。しかし、リーダーがいなくなると帝国は散り散りとなり、ふたたび漢民族の明王朝となりました。明は鄭和を海外に派遣して貿易を盛んにしましたが、陸上の支配は漢民族の習いで限定的でした。

 明のつぎは女真族の清王朝です。女真族は狩猟・農耕の半々で、異民族との戦いにも長けていました。康煕・雍正・乾隆と三代にわたって名君を排出して、モンゴル、ウィグル、チベットも支配し、中国史上最大級の帝国になりました。ただし女真族自体、少数民族なので、漢民族以外にはほとんど自治をまかせました。ところが中国共産党は各民族をしめつけ、漢語を押しつけたりしてヒンシュクを買っています。映画『セブン・イヤーズ・イン・チベット』のとおりです。漢民族として慣れないことはするものではありません。

 ローマ帝国も周囲の民族からの襲撃を防衛しているうちに領土が拡大し、トラヤヌス帝の時期に最大となりました。ただし帝国を維持するのは限界で、次期皇帝のハドリアヌスは帝国の隅々を査察することに多くの時間をささげました。スコットランド地方にいたピクト人は、固定したリーダーがいないので、いくら撃破してもやられたという自覚がないため、とうとうハドリアヌスはかれらの侵入を防ぐために長城を建設しました。このようにローマ帝国の拡張の要因は防衛にあったので、占領した地域には水道橋やコロッセオなどのインフラを整備して、現在も世界遺産になっているところもあります。

 史上最大の帝国はビクトリア朝のイギリスです。南アフリカ、インド、マレーシア、オーストラリア、ニュージーランド、カナダなどと世界中にまたがり、「日の沈まない帝国」となりました。そのため現在でも英語が世界語のようになっています。インドはまとまりのない国でしたが、イスラムのムガル帝国が統一していたためそのまま全部頂きます的に手に入れました。ただし、イスラムも手を出せなかった各民族の宗教がらみの習慣には手を焼きました。ヒンドゥー教の習慣で寡婦が火あぶりになるという習慣(サティー)があります。ヴェルヌの『八十日間世界一周』で、主人公はインドに立ちよったときマハラジャの王妃を火の中から救い出し自分の嫁さんにしました。イギリスのインド支配にはいろいろ問題がありましたが、サティーのような悪習を廃止し、公用語としてヒンディー語に英語を加えました。これはその後のインドが世界に向けて発展する糧となっています。映画『戦場にかける橋』で日本軍の捕虜になったニコルソン大佐が捕虜収容所の斉藤所長としみじみ語り合うシーンがありました。大佐は軍隊に入ってからイギリス本国には2年しか滞在したことはなくインドの司令官として20年間働いた、と言っていました。きっと有能で住民思いの司令官だったのではないかと感じ取れました。

 さてアメリカ合衆国です。金で領土を2回獲得しました。ルイジアナとアラスカです。さらにトランプはグリーンランドを手に入れようとしていますが、これは頂けませんね。