前回、中井吉英先生と心身症のことに触れましたが、まだ紹介しきれず消化不良な感じがしたので追加します。
心身医学会の特別講演の前日、当院恒例の健康講座でも中井先生に「内なる”からだ”と”こころ”への気づき」というテーマで講演して頂きました。さらにその前日も第一ホテルで開催された北海道女性心身医学研究会でも講演して頂き、京都からいらした中井先生をめいっぱい働かせてしまいました。
健康講座での中井先生は一般の方々の目線に合ったお話しをされました。産婦人科の医師の集まり、心身医学会の講演とも参加者によってお話の内容が異なり、ふところの深さに感じ入りました。
健康講座が終了したとき、慢性膵炎で悩んでいるという方が中井先生がもともと膵臓の専門家と知って先生に相談したいと申し出ました。私が中井先生に伝えると快く応じてくださいました。誰もいなくなった会議室は中井先生の診察室に変貌しました。そして私が陪席しました。私にとってラッキーな出来事でした。
中井先生はまず患者さんのお話をジックリと傾聴され、そして膵臓の近辺をお腹から背中から触診され、さらに打診されました。そして「現在は膵炎の症状はありません。定期的な検査でよろしいですよ」とキッパリと説明しました。患者さんは一安心された様子。格好良かった。医者はこうでなければいけません。
先日、腹痛のため内科を受診した患者さんが、検査で異常がないから治療の必要はないと言われたのことで受診しました。お腹を触れると確かに盲腸よりも下の当たりに痛い部分がある。異常がないと言ったって痛いのは確かです。これは患者さんにとっては異常です。内科の医師は実際に腹診したんでしょうかね。ちょっと腹が立ちました。
患者さんに訊くと、近ごろいろいろな事があって疲労困憊して肩も凝っているとのこと。これはオレの得意分野だなと思いました。さっそく左の肩の後ろを探ると、あっ、そこ気持ち良い、という場所がありました。ここに円皮鍼を貼って30回ばかり指圧するとお腹の痛みは消えました。患者さんはビックリ。あとは温泉などに行ってゆっくりと休むと良いですよと説明しました。
これが本当の心身症です。心身症は体の病気です。中井先生は心・身・症ではなく身・心・症と身を始めに持ってくるべきだと言われました。ちまたに心療内科と標榜しているのはほとんどが実は精神科のクリニックです。メンタルクリニックならともかく心療内科はいけません。一般の人々もその区別がつかず明らかに心が病んでいる患者さんが当院を受診すること事が多々あります。
私はもともと精神科志望でもあったので、軽度のうつ病やパニック症の患者さんには対応できますが、やはり餅は餅屋で、手に負えなければ精神科へ紹介します。
こう説明してもピンとこない方もいるかもしれませんね。ここで心療内科と精神科の対応の違いを説明します。心療内科は身体の疾患ですから医師は身体症状がないかを触診を基本として丹念に診察します。精神科の医師は患者さんの体に触れることはめったにありません。私の友人の精神科医が、私が患者さんの体に触れたことを聞いて、これが精神科の医者に欠けていることだと感嘆しきりでした。
第222回 忙酔敬語 心身症と心療内科