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第664回 忙酔敬語 超巨大恐竜プエルタルサウルス

 『ダーウィンが来た!』によると、最近、南米で史上最大級の恐竜の化石が見つかりました。化石は全体のほんの一部ですが、推定、全長35m、体重80トンにもなります。竜脚類の仲間はジュラ紀までと理解していましたが、この恐竜の時代は白亜紀の末期です。考古学の世界は掘ってなんぼのものですから、21世紀になっても新しい発見があるのです。南米での発掘は近年まで手が回っていなかったので新種が続々と発見されています。現在の地球上の動物でここまで大きいのはナガスクジラです。

 どうしてこんなに大きくなる必要があるか?巨大肉食恐竜ティラノザウルスから身を守るためだそうです。デカイ方がやられません。現在のゾウみたいなものです。しかし、考古生学者は死んだ生物を対照とし、本当の生物学者ではないので、生態に関する説明はユルユルでした。まずこの巨大恐竜は卵を産みっぱなしで、孵化したあとは運にまかせるようなことを言っていましたが、解説しているそばから矛盾していました。孵化した赤ちゃんは本当にそのままか?チビだから当然肉食恐竜の餌になるでしょう。巨大恐竜になるまでに全滅です。野生のゾウの生態を見ていると、赤ちゃんゾウを親たちが取り囲むようにして移動したり草を食べたりしています。

 恐竜は鳥の仲間で卵を産みます。鳥と言っても様々で、カッコウのように托卵といってほかの鳥の巣に産むという無責任な種もいますが、南極のペンギンはヒナが大きくなるまでトウゾクカモメから体をはって守りぬきます。プエルタルサウルスも群れを作って赤ちゃん恐竜を守っていたはずです。赤ちゃん恐竜は草を食べても消化する能力がないので、母恐竜が食べた草をある程度消化してから吐き戻して母乳のようにあたえたのではないかと私は考えます。ハトもピジョンミルクと言う分泌物でヒナを育てます。

 赤ちゃん恐竜の敵は大型の肉食恐竜ばかりではありません。同時代にいた哺乳類も無視できませんでした。当時の哺乳類はほとんどが小型でしたが、雑食で孵化したばかりの赤ちゃん恐竜はかっこうの獲物でした。ジュラ紀・白亜紀のデカイ陸上動物は恐竜で占めていましたが、小型動物は哺乳類が占めていたようです。

 6600万年前に巨大隕石が地球に衝突して大量に餌を必要とする巨大恐竜は絶滅しました。生き残ったのは恐竜の一部である鳥類と哺乳類でした。その後、環境は落ちつきましたが、哺乳類の巨大化が先に進んだため、巨大恐竜の復活はありませんでした。

 南米や中国などの発掘が進む前は、プラキオザウルスが巨大恐竜のトップでした。あの『ジュラシックパーク』に登場して世界中の観客の度肝をぬいたヤツです。プラキオザウルスはあまりにも巨大なため、陸上での生活は無理で、半分水に浸かっていたのではないかという説が出たほどですが、そうなると水圧のため呼吸が困難となり、やっぱり陸上に上がったりと、いろいろ論議されました。私はクジラはあんなに大きいのに呼吸ができているし、変なことをいうなあ、と釈然としませんでした。このさらに大きいプエルタルサウルスは、脊柱に隙間があり、鳥のように『気のう』というすぐれた呼吸機能があると推察されています。『気のう』により骨に空洞があるため体は軽くなります。プエルタルサウルスは見かけよりも重量は軽く快適に陸上生活を謳歌していたようです。

 『ダーウィンが来た!』は最新の情報を放映してくれるので、信憑性については危なっかしいところがありますが、その点は想像力で補うことで十分に楽しむことが出来ます。