妊婦健診のとき超音波で赤ちゃんの様子を観察していると、ときどきエコーの画面と私の顔をチラチラと交互に見る妊婦さんがいます。ほとんどの場合、性別が知りたいというパターンです。
そこで「性別ですね?」とカマをかけると、「どうして分かるんですか!」とビックリします。「ショウバイだから分かります」とチョッピリ得意顔。
それからがちょっと問題です。「女の子です」と言うと「何%ですか」と来る。こっちは基本的に理系の頭なので大人気もなくカチンと来る。
「%というのはですね、同じような条件で100例集めて、そのうち何人かということですよ」と、ついよけいな事を言ってしまいます。かわいそうに妊婦さんは「この医者、何をワケの分かんない事を言ってるんだろう」とポカンとしたまま。
「パーセント」の「セント」は百という意味です。「センチメートル(cm)」は百分の1メートル、「センチュリー(世紀)」は百年。
そして「センチメンタル」、これは違うか・・・、こっちの「センチ」の語源は「センス(感じる)」でした。
薬の説明会や学会で、ある薬や治療法が16例中、12例効いたとすると有効率75%といった表現をする。母体が100にも満たないのにこんな表現は滑稽です。
私は今年の産婦人科漢方研究会で、「めまい」の患者さんに連珠飲という処方を使用した経験を発表しました。投与した症例数は37例。その結果、著効15例、有効11例、不変5例、悪化0例、不明6例でした。不明が6例もいることだし、有効率が何%だなんて言い方は恥ずかしくて出来ませんでした。別に他の先生を批判する気はありません。ここまで来ると意固地ですね。まさにこだわりです。
何年か前、当時、飛ぶ鳥を落とす勢いの政治家が、都知事選だったかに出馬するかどうかインタビューを受けた際、「120%ありません」と答えていました。100%を強調したかったのは分かりますが、私はこの政治家、理系の発想に欠けているなと感じました。物事を筋立てて行うには理系の考え方が必要です。将来が危ないと思っていたら、案の定、現在、低迷状態です。では、理系の政治家がよいかと言えば、そうでもありません。東大工学部出身の元総理大臣が散々だったことはご存じのとおりです。要はバランスですね。
始めの妊婦さんの質問に戻ります。では「何割ですか?」ならどうか? これもダメ。「割」は一見ザックリとした表現のようですが、野球選手の打率を見ても分かるように、○割○分○厘と続き、油断がなりません。さらには毛、糸、忽、微、繊、沙、塵、・・・と際限なく続きます。
こんな事を高橋 円先生に話したら、「ただ、おおよその確率を知りたいだけなのに何でそんなにムキになんですか」と笑われました。ウーム、確かにオレは変かもしれない。発達障害かも‥‥。思えば子供のときから今で言うところのオタクで、恐竜が大好きで、図鑑ばかり見て過ごしていたなあ。
そこで最近は、間違いなく女子なら「100%女子」、はっきりしなければ「暫定女子」と言うことにしています。それでも100%女子から100%男子になる事がありました。やっぱり「100%」は安易に使ってはイカンとあらためて自戒した事でした。
第145回 忙酔敬語 %に対するこだわり