京都大学の研究チームが、ネコは自分の名前と他のネコの名前を聞き分けることができる、と発表しました。
あれ、そんなこと今頃分かったの?とちょっとビックリしました。と言うのは、水柿先生はネコを6匹も飼っていますが、ルイ、ココ、イブ、ノア、キイ、メルたちは、そんなのとっくに分かっていて、「ルイ」と呼ぶとルイだけが反応する、と常々聞かされていたからです。
動物の知能の高さは、トップからあげると、人間、イルカ、チンパンジー、サル、ゾウ、クジラ(イルカ以外の)、カラス、イヌと続くそうですが、ネコの知能は、ネコがあまりにもマイペースなので検査が困難であると言われていました。イヌが人間の表情を読み取ろうと必死になっているのは実に健気ですが、もともと集団生活をしていてリーダーに従うようにインプットされてきたため検査にも協力的だったのでしょう。それでもカラスよりも下位というのは残念なことです。
確かにカラスは意味のない遊びなどして賢そうです。小枝で遊んだりするのは日常でも見かけますが、なかには公園の滑り台で滑って遊ぶカラスまでいて、その映像をテレビで見たことがあります。でもネコだって遊びます。昔、子ネコを飼っていたとき、父が白内障の手術のため入院しました。家族全員で子ネコを残して父の様子を見るため家を出ようとしたとき、子ネコは遊び道具に使っていた手袋の塊を玄関まで咥えてきて「ニャー」と鳴きました。妹が「手袋仮面だ!」と言って手袋を振ると子ネコは獲物を狙うかのように跳びかかって来ました。狩りをするための本能的な行動だと思っていたら、遊びのつもりだったことが分かり、ネコって賢いんだなと感心しました。
ネコのマイペースぶりは昔から知られていて、「イヌは人につく、ネコは家につく」と言われてきました。「それって本当かしら?」と水柿先生は疑問を呈しています。「わたしが家に帰ると6匹全員がゴロゴロ言いながら、餌くれってすり寄って来るんですよ。でも娘が帰省するとみんな娘の方に行ってしまうんです」
何でも6匹のネコを飼おうと言ったのは娘さんで、飼ったとたん神奈川の大学に行ってしまったそうで、「無責任ですねえ」と私が言うと「本当にそうなんですから」と嬉しそうに笑っていました。そんな無責任な娘さんを6匹とも慕っているのです。これじゃ「家につく」説に反対なわけです。
「イヌは人につく」説もあやしいものです。鹿野正顕さんの『犬にウケる飼い方』を読むとイヌのしつけにはご褒美が大事で、言うことをきいたら必ず小まめにご褒美の餌をやらなければならないそうです。そう言えば、小学生の頃、ボリショイサーカスでクマの芸を見たとき、何かするたびに調教師はクマに角砂糖か何かを小まめに与えていました。小樽水族館でもオタリアやアザラシが芸をするたびに小魚が与えられていました。そう、動物は愛だけでは動かないのです。水柿先生のネコたちも「とにかく餌くれ」が基本的な行動様式だと思います。
実は人間も同じで、部下を働かせるためにはお布施だと思ってカニやフグといったご馳走を奢らなければならないと、みうらじゅんさんが名著『マイ仏教』(新潮新書)で述べています。それもできるだけ頻回に。ヒトもイヌやネコと変わらないんですね。