休日の夕方、NHKの再放送番組『モンゴルアルタイ山脈 桐谷健太が目撃!幻のユキヒョウ』を見ました。2015年放送で7年近くにもなりますがこれが良かった。
桐谷さんは旅が好きで自称「野良人(のらびと)」。モンゴルのアルタイ山脈の旅となるとオファーできる芸能人はかなり限定されますが、野良人はまさに最適でした。日本からウランバートルまで飛行機で6時間、さらに近くの町までプロペラ機で3時間、さらにさらに現地までオフロードの車で6時間、さらにさらにさらに山のふもとの散策は馬に乗らなければなりません。桐谷さんは時代劇に出演したことはありますが乗馬のシーンは経験していません。10歳の子供とその父親から手ほどきを受けます。
モンゴルの子供は4歳から馬に乗っているのでまさに人馬一体。番組中、お祭りで馬のレースが紹介されますが参加しているのは10歳ちょっとの子供たち。それが160人ぐらいで20㎞以上の直線距離をつっぱしります。2000年以上も前から中国は北方民族の侵略に悩まされ続けてきましたが、こんな連中が相手ではたまったものではありません。万里の長城が必要になるわけです。お祭りでは伝統のモンゴル相撲もやっていました。みんなで楽しむというよりも競技大会です。串焼きや飾り物などの出店もありましたが勇猛果敢な人たちの集まりといった感がありました。やはり中国はやられるはずです。
ここまで書いていたら椎名誠さんの『草の海』を思い出しました。これを読むとモンゴルの草原を馬で走る心地よさがシミジミと伝わってきました。競馬やオリンピックの乗馬競技には興味はありませんが草原を自由に走るのには憧れます。草原を走った後のヒツジ料理は単に塩ゆでですが、その味は格別だそうです。札幌にも3年ぐらい前までモンゴル料理専門店がありました。ときどき行って堪能していましたが、いつの間にか閉店していました。食レポでも高く評価されていたのに残念です。
桐谷さんはミュージシャンでもあります。民族楽器を奏でながら遊牧民の長老からホーミーを習いました。ホーミーとはモンゴル特有の発声方式で高音と低音を同時に歌い、その調べはモンゴル草原に響きわたります。音感の良い桐谷さんは一発で会得。さーすが!
ユキヒョウは警戒心が強く人前に現れることはないので、地元の遊牧民でさえ一生見たことのない人もいます。番組では遊牧民の長(おさ)と生体学者の助っ人を得てシブトク探索します。アルタイ山脈のふもとは、はるかに3㎞くらい先を見渡せる岩地なので、普通だったらこちらがユキヒョウを発見する前にユキヒョウの方が先に気づきます。しかし、そこは専門家集団、ユキヒョウが尿でマーキングした箇所を探して捜索の範囲を絞り込んでいきます。野良人の桐谷さん、ユキヒョウのマーキングした跡に鼻をくっつけてクンクン嗅いで言いました。「うっすらですが動物のニオイがしますね」
遊牧民の長はユキヒョウとの共存を望んでいるのでユキヒョウが嫌がる深追いはしたくありません。それに対して生態学者は積極的です。その対比が面白かった。ある日、望遠鏡の片隅にユキヒョウが発見され、続いて全身像も確認できました。堂々として美しい姿でした。「やったやった」と喜び合いますがそれ以上のことはしませんでした。
最後の桐谷さんの語りが良かった。現在注目のマインドフルネスそのものです。
「遠い山々や草原を見たり風の音を聞いたりしていると動物のように何も考えなくなります。ただ自然に身をゆだねて時間が流れているだけ。これって素晴らしい体験でした」