当院には「4」と「9」の附く診察室や病室はありません。「4」は「死」、「9」は「苦」に結びつくからです。昔の病院はどこもそうでしたが、最近では平気で「4」も「9」も使われています。今の人たちはそんなことは気にもとめていないからです。
外来で診療していると、ときどき、「4」と「9」がないために混乱をきたすことがあります。3番診察室で診察した後、「5番にお入りください」と案内すると、患者さんによっては「3」のつぎは「4」と思い込んでいるため、6番診察室に入ってしまうのです。8番診察室で診察した場合も同様で、10番診察室に入るように説明しても10番診察室を通り越して11番診察室に入ってしまいます。11番に入る患者さんはお年寄りに多く、この年代でもすでに「9」と「苦」にこだわっていないのが分かります。
病室も、203号室のとなりは205号室、208号室のとなりは210号室と面会にいらした方が面食らうことがしばしばです。ですから今後リフォームする機会があれば、「4」と「9」を復活させたいと思っています。
私個人としては、「4」と「9」は好きな数字です。2の二乗が「4」、3の二乗が「9」、なかなかいい感じです。ガキの時分、東京に住んでいましたが、隔週金曜日、「4」チャンネル(日本テレビ)で放映された『ディズニーランド』(別の週はプロレス中継)を楽しみにしていました。「冒険の国」、「おとぎの国」、「未来の国」、「開拓の国」と、これまた「4」つのテーマ別に放映されていました。一番好きなのはアニメの「おとぎの国」で、「冒険の国」のときはちょっとガッカリでした‥‥‥。何だか「4」と関係のない話になってしまいました。
数字の話をしてきましたが、高校2年生までは理数系が得意でした。しかし物理がどうも苦手でそれにともない数学もダメになりました。医師になってからは研究は別として、臨床の場では文系の知識の方が役立っています。患者さんの出身地とかその地方の歴史、文化などを知っていると信頼関係も深まります。たとえば「明珍」という性の患者さんが受診されたとき、「ご主人のご先祖は甲冑師では?」と訊いたとき、「よくご存じで」と驚かれました。まあ、文系というより雑学ですかね。
我が生涯で数学が得意だった時期が二度あります。小学校5年のときと高校2年のときでした。小学5年のとき階段の傾きについて深く考察したことがありました。一つの階段の高さと奥行きを限りなく小さくすると、斜めの直線になることを思いつきました。これって微分につながる考え方です。しかし、その後は泣かず飛ばず。高校2年のとき、世界的な数学者の岡 潔著『春宵十話』を読み、数学の美しさに惹かれました。数学の授業で黒板に方程式の回答を書いたところ、宮崎先生に「佐野君の回答には美を感じます」と言われ有頂天になりました。その後は私の想像力の想定外である「虚数」が現れてあえなくダウン。二乗してマイナスだなんてルール違反だよ。
以上、「4」と「9」の話題以外は付け足しみたいな内容でした。なぜ、こんなアホらしいことをダラダラ書いてしまったかというと、ブログを見ている方は気にならないかもしれませんが、A4の用紙では余白ができてしまうからです。最近、ブログを書いていると、一行でも余白が残ると気になってしょうがなくなりました。何だかほとんどビョーキですね。いくらヒマとはいえ(失礼!)、おつきあいくださったことに感謝します。
第108回 忙酔敬語 数字のお話