9月25日の讀賣新聞の一面に「解雇・雇い止め6万人超す」(新型コロナ飲食業最多)という記事が載っていました。ちょうどその時につけていたNHKニュースで、奄美大島からマングースが消えた、と放映されていました。
マングースは奄美大島原産ではなく、東南アジアを中心に生息しています。どう猛で毒蛇にも果敢に挑むので、日本でも「マングースVSコブラ」ショーがはやったことがありました。たいていすばしっこいマングースが勝つので、奄美大島で悩みのタネになっているハブもやっつけるのではないか、との浅知恵で1979年に30頭のマングースが放たれました。マングースは奄美大島に適応して2000年には1万頭にまで増えました。
ところが案に相違してマングースとハブの出会いはほとんどありませんでした。マングースは日中に活動するのに対してハブは夜行性。わざわざハブを探さなくてもアマミノクロウサギなど奄美大島固有種の安全な動物を餌としたため、マングースバスターズなるものが結成され、3万個の罠をしかけて駆除することになり、その成果はほぼ達成されたのでした。
マングースは解雇されたのか、それとも雇い止めになったのか?
「解雇」は会社の一方的な意思によるもので、「雇い止め」は双方の合意によるものだそうです。マングースは当然合意などするワケはないので、この場合は解雇ですね。それもかなり悪質な解雇です。
マングース以外にも人為的に日本に取り入られたあげく解雇になりそうな動物はいくらでもあります。その筆頭がアライグマ。アニメ『あらいぐまラスカル』を契機に、その可愛らしい姿のためペットとして輸入されましたが、気が荒く意外に扱いにくいので多くの飼い主が野に放ちました。無責任と言われても仕方ありませんが、さすがに殺すのは忍びなかったのでしょう。こんなケースが何例も出た結果、アライグマは日本の環境に順応して数を増やしました。まさに「憎まれっ子世にはばかる」です。雑食性で寒さにも暑さにも強く、さらに泳ぎや木登りも得意で、二次元三次元にわたって行動するのでなかなかやっかいです。生態系を乱し、農作物も荒らすためペットとしての輸入は禁止され駆除の対象となってしまいました。なんせ上下左右に移動して何でも食べるので、マングースほど成果は上がっていません。解雇の宣言を受けていますがいつのことになるのやら・・・。
食用ガエル(ウシガエル)はもともとその名のとおり、食用としてアメリカから輸入されましたが、日本ではフランスのように食材としては受け入れられず野生に放たれ金魚の養殖などに被害をあたえています。食用ガエルの飼料として同時に輸入されたアメリカザリガニは、養殖場を抜け出してそのたくましさから日本ザリガニに取って代わり、生態系や農業にも被害が出ています。食用ガエルは実験にも利用されているため、まだ解雇宣言は受けていませんが、アメリカザリガニは今年から指名手配あつかいになりました。
西洋ミツバチは蜜の採集のため明治に輸入されました。ようするに雇用です。気性が荒く日本ミツバチを追いやり、今や日本ミツバチは対馬列島などで細々と生息しています。日本ミツバチは蜜の生産性が低いため、その蜜は希少価値となりました。かたや西洋ミツバチはビルの屋上でも蜜を収集するため解雇どころかさかんにもてはやされています。
動物の雇用・解雇はすべて人間が勝手に決めたことです。雇い止めはありません。