佐野理事長ブログ カーブ

Close

第448回 忙酔敬語 地団駄踏む

 友人に彼の孫の動画を見せつけられました。2歳にもみたない女の子が泣きながら歩いていました。何かに怒っている様子。そのうち泣き声が大きくなり立ち止まったかと思ったら、バタバタと強く足踏みを始めました。いわゆる「地団駄踏む」です。友人が「かわいいだろう」と言うもんだからしかなくつき合っていましたが、地団駄を踏んだとたん友人の娘が大人になっても「地団駄踏んだ」ことを思い出しました。

 「そう言えば、お前さんの娘もいい年して地団駄踏んだって言ってたよな。と言うことはこのチビは母親似ってことだな?」

 「それが違うんだ。地団駄踏んだのは長女で、この子のおばさんだ。この子の母親は次女で怒っても地団駄踏んだことはない」

 「じゃあ、母親のマネではないんだ。学習ではなく遺伝なんだ」

 「そうかも知れない。実は家内もうんと怒ると太い足をバタバタさせて地団駄踏む。家内のオフクロも人前ではやらないが、昔はバタバタやってたそうだ」

 私はがぜん興味しんしんとなりました。この地団駄踏むという一見意味のない行為が遺伝子のなせるワザで、人間以外の動物に当てはめると、それまで分からなかった行動に光があたったような気がしたからです。

 毎度お馴染みの私のお気に入り番組、BSプレミアム『ワイルドライフ』で狩りバチの生態を見たことがありました。

 狩りバチは自分よりもでっかいイモムシに毒針を注射して麻酔をかけます。そしておとなしくなったイモムシを巣穴に運び込んで卵を産みつけ、卵から孵化した幼虫は新鮮なイモムシを食べて成長し、さなぎとなり、そして成虫になって巣穴から飛び立ちます。

 ハチがイモムシに麻酔をかけるとき、イモムシの3ヵ所ばかりの神経節に的確にうちます。別に親にならったわけではなく本能のなせるワザです。このハチのお母さんは昆虫の習いでイモムシに卵を産みつけた時点でさっさと飛び去り子どもの教育なんてしません。さて、ハチはどうしてイモムシの神経節が分かったのでしょうか? 考え込んでしまいました。おそらく昔の狩りバチはイモムシのアチコチに適当に麻酔をかけたのでしょう。いい加減にうったハチはその後、自然淘汰され、たまたま神経節にうった遺伝子を持った個体が生き延びたと考えました。虫のターンオーバーは1年くらいで、人間とくらべて圧倒的に早いのでこういった行動は遺伝子に取り込まれてまたたく間に広がります。

 熱帯雨林に棲む昆虫のなかには巧みな擬態で知られている種が多数します。カマキリの仲間一つにしても木の幹に張り付いていて、いくらカメラを近づけてもジッとしていれば見つけるのが困難な種もいれば、花に化けて近寄った獲物を巧みにゲットする種もいます。こんな虫を紹介するとき、たいてい「昆虫の知恵」なんて説明していますが、たまたま木の幹や花に似た個体が生きのびただけで、カマキリが努力したわけではありません。  新コロナのため学校教育が遅れていますが、勉強が合う子はだまっていても取り戻せます。学校大好きな子にはつらくて長い休みでしたが、学校嫌いな子にとっては気楽な生活だったようです。学校生活が苦手な子は2割くらいいるそうです。その子にとって学校は棲むべき所でないのです。しかし、大人たちは発達障害などといってヤイノヤイノと責め立てます。かれらは人類がダメになったときの救い主になるかもしれないのに・・・。