6月29日、札幌市医師会館で産婦人科関連の「家庭医学講座」が開催されました。札幌東豊病院の菅原先生が「思春期の諸問題(性感染症を中心として)」、札幌マタニティ・ウイメンズホスピタルの大久保先生が「女性のためのがん検診」、そして私が「更年期のメンタルケア」について20分ずつ講演しました。菅原先生や大久保先生はきちんとしたデーターをもとにした、なかなか立派な講演でしたが、私は例によってユルイ内容でお話ししました。本当は「女性のメンタルケア」にするつもりだったのですが、「更年期」というと人が集まると言われたので「更年期のメンタルケア」にしました。しかし、持ち時間は一人20分なので「更年期」にして正解でした。
まず更年期の定義、閉経の5年前から閉経後5年の10年間。ですからまだ生理のある女性に「私は更年期ですか?」と聞かれても、閉経がいつになるか分からないので返事に困ること。日本には昔から「初老」という言葉があったが、もともとは40歳のことをいい、昭和50年代から50歳、最近では60歳と認識されるようになり、将来は70歳になるかもしれず、だから皆さんは老化をこわがらないでねと話しました。あまり受けるとは予想してませんでしたが、会場のあちこちからクスクスと笑い声が広がったため私のテンションも上がりました。つづいて更年期障害の原因について述べました。一つ、卵巣ホルモンの欠落で症状はホットフラッシュと発汗。二つ、体力の低下。三つ、人間関係(家族、職場、友人など)、四つ、うつ病。
メンタル面の治療法については、ホットフラッシュがあればホルモン補充療法が有効であること。体力の低下については避けられないことなので生活のくふうをすること。人間関係に関しては「なかよくする秘訣」についてお話ししました。みうらじゅん『マイ仏教』(新潮新書)をネタにして、「何でこの俺(わたし)が」という禁句、相手の機嫌を取る(誇りを持って、心をこめて)ことの大切さ、機嫌を取るのにはタダというワケにはいかないのでお布施をすると思って食事をおごったりプレゼントをするべきであるといった具体的なアドバイスをしました。うつ病については、まずゆっくりと休むことと休める環境作り、そしてお医者さんと相談して抗うつ薬を服用すること、自分に合った人生を送れるようになれば抗うつ薬も必要なくなると述べました。
さいごに第25回のブログ「更年期の効用」にも書いたように、更年期障害という診断名が認識されているため、女性ではうつ病の早期発見ができること、また不幸にしてツレアイが亡くなり体調を崩したときの「悲嘆ケア外来」の受診率が高いこと(残念ながら北海道では「悲嘆ケア外来」は浸透していません)、お互いに健康のことを話し合う機会が多く「あなた、それ更年期よ、病院に行ったら」と言われるため、病院を受診するハードルが男性よりも低いことをあげ、「更年期って女性の健康にとってそんなに悪いものではありませんよ」と言って講演を終えました。
講演の後は個人相談コーナーです。前日、先輩の先生から「面白い話をしたら個人相談を希望する人が多くなるので早く帰りたければ適当な話ですませた方が良いよ」とアドバイスを受けましたが、ツマラナイ話をして会場がシラーッとするのもツライものです。幸いにも相談にいらした方は5,6人いました。みなさん深刻な問題をかかえており、一人2,3分のわくをかるくオーバーしました。少しでもお役にたてたらなと思いました。
第76回 忙酔敬語 更年期のメンタルケア