佐野理事長ブログ カーブ

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第438回 忙酔敬語 喘息とパニック障害の薬物治療の共通点

 NHKの健康番組『ガッテン』で、喘息持ちの患者さんの80%が適切な治療を受けていないと紹介されました。出所は世界喘息学会の最新報告です。

 喘息の患者さんの多くが発作止めの吸入器だけを使用しているため、根本的な治療にならず、ある日突然吸入器をいくら吸っても治まらなくなり、窒息寸前で救急車で病院に運ばれる危険なケースがあると、救急車のピーポーなど映像込みで放映されました。

 気管支喘息の病態は気管支の慢性炎症です。したがって炎症を押さえるステロイド剤の吸入を定期的に使用するのが基本的な治療です。それでも発作が起きれば気管支拡張剤の吸入をする、これでほとんど窒息寸前の恐ろしい喘息発作を防ぐことができます。

 自慢するようですが、これについては10年くらい前から知っていました。長野オリンピックのスピードスケートで金メダルを取った清水選手も長年喘息に悩まされていたそうで、アドエアという吸入薬のパンフレットに顔写真が掲載されていました。アドエアはステロイドと拡張剤が混合された製剤で便利な薬です。でも、何でもないときは気管支拡張剤は必要ないので、落ち着いているときはステロイド剤だけでいいと思います。

 そこで気がついたのがパニック障害の患者さんに対する治療でした。

 平成17年の秋、パニック障害の第一人者である貝谷久宣先生が、札幌で『パニック劇場』というタイトルで講演されました。名講演で素晴らしかった!!

 「私の治療法の基本は薬物療法で心理療法はほとんどしていません」

 開口一番に述べられました。

 しかし、患者さんと医師との診察現場の動画を見ると、医師はそれなりにアドバイスをして、また、それが患者さんとかみ合っていないのに気づきました。

 さらに能弁に語る貝谷先生の息づかいがガラガラ声で気になりました。

 休憩時間に質問しました。

 「あの動画を見ると、心理療法もしているように思えたんですけど」

 「私も海千山千ですからね。自然にそのくらいのことはしてしまいます」

 「それにしては医師と患者さんの会話がかみ合っていなかったようですが・・・」

 「あの医師の役は製薬会社の社員でして、マズイ対応例を紹介したのです」

 本当に海千山千の先生でした。

 「先生のお話中に気になったんですけど喘息をお持ちですか?」

 「はい、良く気づかれましたね、先生は内科のお医者さんですか?」

 「いえ、産婦人科です」

 こんな調子で懇親会では貝谷先生の横に座って意気投合しました。

 貝谷先生の基本処方はSSRIで、当時一番の売れ筋だったパキシルよりも安価なデプロメールの方が効くと説明されました。SSRIは効くまで時間がかかるので抗不安薬のメイラックスを同時に処方。それとSSRIは飲みはじめに吐き気を生じるのでスルピリドも追加。これらを夕食後に1回飲むとほとんど解決します。それでも発作が起きればワイパックスを舌下すると症状はたちどころに消失。このワイパックスがよく効くので、患者さんの中にはこれだけの処方を希望する人がいます。でも基本はSSRIです。  というワケで喘息もパニックも似たような薬物治療だなあ、と思ったのでした。