佐野理事長ブログ カーブ

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第370回 忙酔敬語 誰よりもママを愛す

 2006年に放映されたテレビドラマです。それほど高視聴率をとったわけではありませんが不思議と私の心には深く印象に残っています。女性医師の活躍が子育てで制限されている現状を見て、あらためて仕事を持つ妻をささえる男の生き方とは?ということで最近思い出してしまいました。ただし、10年以上も前の記憶ですので細かい思い違いは勘弁してください。

 田村正和演ずる元銀行マンの夫は、敏腕弁護士の妻(伊藤蘭)は自分よりも社会への貢献度が高いと判断して、自分の仕事はリタイアし、あえて専業主夫として生きていくことにしました。子供は気の強い長女(内田有紀)、NOと言えない気の優しいイケメン美容師の長男(玉山鉄二)、そして小学5年生のおとなしい次男の3人です。

 ドラマは田村正和がスーパーでワゴンを押して買い物をするシーンから始まります。夕方6時になるかならないかで値引きするはずのお肉に手を伸ばします。店員が「まだ、値引きの時間ではありませんよ」と注意しますが、パパは「何を言ってるの、もう時間に決まっているでしょ」と意に介しません。そうこうしているうちに値引きのお知らせのアナウンスが流れます。「ほら、こうなったでしょ」と正和パパは意気揚々をお肉のパックをカゴに入れます。敏腕主夫の面目躍如です。

 そんな一家のとなりに、ある日、やさぐれた中年女性が引っ越してきます。昼間から飲んだくれているようです。ゴミの収集日や分別もいいかげんで、実に迷惑な隣人が来たもんだと、正和パパを悩ませます。どうも、この女性、過去のトラウマで男性不信になり、やけくそになっているようでした。しかし、正和パパと言葉を交わしているうちに、こんな男性が世の中にいたんだ!と一家に対して好意をいだき心を開くようになりました。そして、メリハリのある生活ができるようになり医師として社会復帰します。この小林聡美さん演ずる女性医師が知的で深みがあり、これまで見た映画やドラマの医師役の女優さんの中でダントツに本物の女医さん!という感じがしました。

 内田有紀さん演ずる長女は、現在放映中の朝ドラ『まんぷく』の優しい咲ねえちゃんとは対照的に気性が荒く、いつもイライラしていますが、蓼食う虫も好き好きで、劇団ひとり演ずる売れない芸人に惚れられて、そうこうするうちに2人で漫才をするようになりました。もちろん長女はツッコミ、ひとりはボケです。変なカップルの誕生でした。

 イケメンの玉山にいちゃんは、あまたの女性からアタックを受けますが、NOと言えずグズグズした人生を送っています。そこへキモイ阿部サダヲのオカマのピンコが猛アタックしたあげくとうとう2人は結ばれてしまいました。えっ! 玉山にいちゃんは性同一性障害だったの?といった妙な結末でした。

 まともなのは内気な末っ子の初恋。好きな女の子のためにケンカまでしますが、彼女の転校で悲しい別れとなりました。私としては一番感情移入ができました。

 こんな個性的な面々に囲まれて正和パパは奮闘します。最後は欄ちゃんママが乳がんの手術を受けましたが聡美先生の暖かい支援によって無事に治療は終えました。欄ちゃんママは正和パパの手を乳房の無くなった胸に当てて言います。「パパ、こんな私でもいいの?」。もちろん正和パパは「誰よりもママを愛す」です。   これからはますます正和パパのような男性が活躍すべきだと思ったことでした。