お金もないのにこんな物を建てて・・・。さいわいにも「こんな物」が後世にまで残って、観光などの収入でもとをとったと思われる建築が世界各地にあります。
まずは銀閣寺。足利義政が応仁の乱の初期に造らせた庭園建築です。修学旅行に行った学生には圧倒的に金ぴかの金閣寺が人気ですが、庭園の一部として鑑賞したら較べ物ならないほど銀閣寺がすばらしい。金閣寺は室町時代の最盛期に足利義満が建設し、収支はOKでしたが、銀閣寺はクレージーな試みでした。財政はひっ迫して室町時代の終わりを早めました。ところがたび重なる争乱にも焼けることなく生きのびて、現在では拝観料などでかなりの黒字となっているはずです。つぎに述べる2つの建造物は大理石などによる石造りで莫大な費用がかかっていますが、木造の銀閣寺はほどほどです。
銀閣寺そのものは貧相に見えるかも知れませんが、庭園全体として鑑賞すれば義政の芸術的なセンスが伝わります。この庭園の一部としての建築物は多くの日本庭園に引きつがれています。BSプレミアムで『村雨さんと日本庭園たしなみ巡り』で三渓園が紹介されたとき、小さな古建築物を見て銀閣寺のパクリだなと思いました。ネットで調べたら私の考えは間違ってはいないようでした。
インドのタージ・マハルは世界最高の美しい建築物とされています。ムガル帝国の皇帝シャー・ジャハーンがその亡き妃のために建造した霊廟です。銀閣寺と違って誰もが納得する美しさです。何せ総大理石で20年もかけて造りました。その建築費はあまりにも莫大で、現在に至っても採算が取れているかどうかは不明です。
もっとクレージーなのがドイツのノイシュヴァンシュタイン城です。ドイツ旅行の案内のポスターには必ずデカデカと写っています。ドイツが統一される前のバイエルンの国王ルードヴィヒ2世が19世紀のまっただ中に山の中に造らせたメルヘンチックなお城です。もちろん軍事的な価値はなし。あまりにも費用がかさんだためバイエルンの国費は傾き、王が死んだ後は内部の建設は中止されました。要するにまだ未完成です。
イタリアの巨匠、ルキノ・ヴィスコンティーが『ルードヴィヒ 神々の黄昏』という耽美的な映画を作りました。映画にはノイシュヴァンシュタイン城の外観は撮影されていません。ただ城内の人造湖に佇む心身を病んだルードヴィヒの姿が描かれています。まだ完成されていなかったのです。ルードヴィヒは当時の大作曲家のワーグナーに入れ込みましたが、この映画のエンディングに採用された曲はショパンの別れのワルツです。そのシーンは王の死に顔に雨がそそいでおり、威勢の良いワーグナーの曲は向きませんでした。
この城も現在、観光源として莫大な利益を稼いでいるはずですが、黒字かどうかははっきりしないそうです。クレージーな建造物ではっきりした黒字をはじき出しているのはわが国の銀閣寺だけで、タージ・マハルやノイシュヴァンシュタイン城は収支が不明との結果でした。日本は昔から収支決算にうるさい国で、薩摩藩が500万両の借金を1年2万両250年払いの契約を勝ち取り、それも明治維新のいざこざで帳消しになってしまいました。
エジプトのピラミッドは先の3例よりもクレージーと思われますが、公共事業として行われたので始めから収支はトントンだったようです。中国の紫禁城は明が建設しましたが、清王朝の女真族は少数民族でケチでしみったれだったのでそのまま引きついだため、これもトントン。わが国の皇居も江戸城を再利用しているのでリーズナブルです。





