佐野理事長ブログ カーブ

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第755回 忙酔敬語 私はクジラ少年だった。

 シロナガスクジラ、ナガスクジラ、イワシクジラ、セミクジラ、ザトウクジラ、マッコウクジラ、イッカク、アカボウクジラ、シャチ、マイルカ、バンドウイルカ。

 以上、私が小学校低学年で覚えたクジラたちです。小学館『動物の図鑑』の2ページの見開きに記載されていました。マッコウクジラが海底から浮かび上げって空中にジャンプしている姿が印象的でした。その他のクジラはおとなしいポーズで納まっていました。

 最近ではミンククジラが捕れていて話題になっていますが、その図鑑には載っていませんでした。ミンククジラはイワシクジラに似てしかも小型なためコイワシクジラと呼ばれていました。その曖昧さのため図鑑に掲載されなかったかもしれません。ちなみにミンククジラはクジラ肉では一番美味しいそうです。

 私は子供の時分、肉の脂身が苦手でした。その点、クジラは赤身と脂身がはっきりと分かれていて、ふつうの食用として使われるのはもっぱら赤身だけ。給食でも自宅でも安心して食べました。まあ、好物といってもよかったと思います。脂身はベーコンとして安価に販売されていました。友人が弁当のクジラベーコンを分けてくれたことがありましたが脂が胸に応えてそれ以上は食べることができませんでした。最近では高級な居酒屋などで提供されていますが、調理がていねいなため珍味といったおもむきです。

 クジラの脂を塩漬けにしてから料理した物は江戸時代から高級料理とされていて、井原西鶴の『日本永代蔵』で「クジラ皮の吸い物」として登場しています。中学生のとき私たち一家は釧路に住んでいました。ある日、父が会社の接待に利用していた高級おでん店に連れてってくれました。そこでクジラ皮のおでんを食べました。その美味しかったこと。父はケチなので行ったのは一回きりでした。この旨さを覚えていたため「クジラ皮の吸い物」の価値が理解できました。クジラ皮を水にもどして煮込んだおでんは柔らかく旨味がありました。中国人は干しナマコの料理を珍重しますが、あれは旨味もなくただフワフワしているだけです。だからクジラ皮の料理は中国の人にはヒミツです。

 釧路は当時、クジラの水揚げ量が日本一で新鮮なため市民は刺身で食べていました。血が豊富なため赤身の魚をさらに濃くした感じで、ワサビではなく生姜醤油で食べていました。そう言えばカツオの刺身もワサビよりは生姜が合いますね。その後、日本は世界中からバッシングを受けてクジラを食べる文化が危うくなりましたが、最近ではまたOKになってきています。しかし、私が子供の頃と違って釧路から来た妊婦さんにクジラのことを聞いても昔ほどは刺身では食べていないようです。

 捕鯨反対のシーシェパードやグリンピースが活動していた真っ最中、厚労省は妊婦さんが水銀を摂らないようにとポスターを作成しました。そのポスターの真ん中にはバンドウイルカがジャンプしていました。バンドウイルカは比較的大きな魚を食べ海の生態系の頂点にいるので水銀がダントツに蓄積しています。したがって妊婦さんはイルカを食べるのは2ヵ月に80g以内にひかえましょうという趣旨でした。クロマグロやサメも水銀量は多いのですがイルカほどは蓄積していません。しかし、バッシングの最中によくもあんなポスターを作ったもんだと当時の厚労省の太っ腹に感心したものです。

 さて、イルカよりもはるかに大きなヒゲクジラは大量のオキアミを食べています。小さなオキアミは海洋性の動物の中では総重量ではトップを占めています。われわれ人類もクジラを見習ってオキアミを摂るようにすれば稀少な魚を絶滅から防げるはずです。