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第754回 忙酔敬語 今さらですが・・・

 生理痛のため黄体ホルモン療法(ジエノゲスト)を服用している患者さんが言いました。 「少しずつ出血が続いているんですけど、これって放っておいていいんでしょうか?」 私は答えに窮しました。

 「その質問ですが、今さらこんなことを言うのもなんなんですけど私はよく分かりません。男性医師の限界ですね。女性の先生なら親身になって返答できると思います」

 最近になって男の身として、毎月のように生理が来るのは実に面倒なことだと思うようになりました。若い頃は医学教育で習ったように異常か正常かで割りきって対応してきましたが、この歳になってつくづく女性は大変だなあと思うようになりました。現在の私の年齢はふつうの女性なら閉経して20年は過ぎています。まさに今さらです。 

 貧血の女性の原因のほとんどは月経過多です。そこで質問します。

 「生理の量は多くありませんか?」

 この質問、実はナンセンスです。たいていの女性は現在の自分の月経量に慣れているので「ふつうですけど・・・?」と答えます。人と較べることもないようです。普段の会話でダンナや厭な人の悪口を語り合っても生理が話題になることはないそうです。それではどうやって確認するのか? オーストラリアではナプキンに着く血液の量をコインの数にたとえて表現しています。コインの大きさは日本の500円玉くらいです。私はそれもピンとこないのでナプキンの大きさで確認しています。ふつうの生活ではナイト用のナプキンは日中には使いません。四六時中ナイト用のナプキンを使っていれば要注意です。ナプキンでは納まらないのでタンポンも併用していれば月経過多に間違いありません。

 さて月経過多の治療ですがいろいろあります。最初に述べた黄体ホルモン療法、子宮に黄体ホルモンを装着する方法もあります(ミレーナ)。ジエノゲストは毎日忘れずに飲まなければなりません。ミレーナは体に何か入れられるのは絶対にイヤ!という女性もいます。そして今さらですが昔からある日本で開発されたトラネキサム酸という止血薬が見なおされています。

 トラネキサム酸は出血が気になるときに飲みます。子宮に異常はなくてもフォン・ヴィレブランド病という止血機能に異常のある病気では月経過多は必発です。出血で有名なのは血友病ですが、フォン・レセプターブランド病は比較的有病率は高く、分娩などにはそれほど影響はないので自覚症状は月経過多以外はほとんどありません。そしてその第一選択はトラネキサム酸です。イギリスでのトラネキサム酸の評価は高く1日3.9~4.0gの服用が奨励されていますが、本家本元の日本では最大1日2.0gとなっています。どうしてこうなったのかはよく分かりません。でも1日2.0gでもそれなりに効果はあります。

 月経過多の場合、ジエノゲストや低容量ピルが通常使われていますが、先ほども述べたように毎日欠かさず飲まなければありません。出血もしてないのに・・、とモチベーションがさがります。その点、トラネキサム酸は出血時だけなので患者さんも受け入れてくれます。貧血があれば鉄剤を飲めばよくなります。鉄剤も一日飲み忘れてもどうってことはないので患者さんにとってはラクです。トラネキサム酸も鉄剤も昭和の時代からありました。薬の種類も関係しますが治療費も安価だと思います。今さらですが今後はこのやり方も採用しようと考えています。