シラバスとは大学や専門学校の講義の内容や進め方を示す計画書のことです。私はある看護学校で講義をしていますが、2年にわたって学生から講義の内容がシラバスと違うとクレームを受けました。事務方の理事Kさんが困った顔をして2回も知らせに来ました。講義の内容は婦人科疾患で3回行っています。1回90分の講義3回で婦人科疾患すべてを説明するのは医学部では不可能です。7年ほど前、校長のM先生にそう言ったら「先生の臨床でのご経験をお話ししてくだされば良いんですよ」と言ってくれました。今やM先生は定年退職され、私を守ってくれる人はいなくなりました。
M先生の提案にしたがい、それからの数年間はビックリ症例を紹介しました。朝、外来で腹痛のためひっくり返っていた若い女性を鍼治療一発で治した話とか、長年腹痛に悩まされていた中年の女性を漢方薬で治した話などなど・・・。私は飽きっぽい性分なので、何年かするうちに同じ症例をくり返すことも出てきて、一昨年は「生命の始まりから終わりまで」という自筆のパンフレットを配布して熱を込めて話しました。当然、シラバスとはまったく関係ありません。昨年の春、Kさんがやってきたので「今年は大丈夫ですよ」と製薬会社のパンフレットを資料として講義しました。
10年以上も前、ハーバード大学の政治哲学マイケル・サンデル教授の「正義とはなにか」という講義が人気を呼び大勢の学生が集まりました。サンデル教授はアカペラで学生と語り合いました。「君の名は?」、「トーマスです」、「そう、ではトーマス、この問題についてどう考える?」、「ウンヌンカンヌン」、「なるほど、これに対する意見は?」、「ああ君、君の名は?」、「ジェシーです」、「ジェシー、君の意見を聞かせてくれたまえ」、「ウンヌンカンヌン」・・・・。正解は述べずにサンデル教授はスタスタと退場しました。
内容はどうってことはありませんでしたがハーバード大生の熱量に圧倒されました。それで「白熱教室」として語りつがれているのです。私もこんな講義がしてみたくて前列に坐ってこっちと目が合った女子学生に「お子さんはいるの?そう、女の子か、だったらHPVワクチンについてどう思う?」などと聞いたこところ、その問答を聞いていた男子学生から「セクハラではないのか?」という意見が学務課に寄せられました。さらにはまたシラバスから外れていたとのことでした。
今回は第1講目からのクレームでした。さっそくKさんがやってきました。Kさんは私のブログの愛読者で「どうして先生の良さを職員は理解していないのか」と嘆いてくれました。そこで思いついたのが講義の資料として最近書いたブログを提供することでした。
第2回目の講義では、はじめに「セクハラめいた事を言って不愉快な思いをさせ申し訳ありません」と謝罪しました。つづいて自分は現在熱く思いを抱いている事について語りたい、したがってシラバスにのっとった話をするのはイヤである、と開き直りました。一番後方の席には学年の担任がいて私の講義を聴いていました。いままではほったらかしみたいでしたが、このように学校としてどのような講義が行われているのか確認するべきだと考えていたので大歓迎でした。昨年、印象に残った事件は、札幌の家庭裁判所が手術・ホルモン治療なしで男性から女性への変更がOKとし、性を決定づけるのは大脳であることを認めたことでした。その意義について語ったところ、学生たちは好意的に受け入れてくれたようでした。学担の先生も興味深かったと言ってくださいました。





