昨年、NHK『謎解き!ヒミツの至宝さん縄文丸木舟』にはほとほと感服しました。5500年前の丸木舟に関するお話しです。発掘されたのは10人くらいは乗れる底の深い遠洋タイプの丸木舟です。それを3Dスキャンで解析していました。
そもそも日本の縄文時代は世界史的も高レベルな文化を生みだし、10000年前に世界初の土器を製造しています。エジプト・メソポタミア文明よりもさらに昔です。ただし地形の状況で大規模農業は開発されていませんでした。中近東は平原が広く適度に乾燥して小麦の生産に適していました。かたや日本は山海の狩猟採取に恵まれていました。海辺に行けば貝の取り放題です。サケも河を途上してきました。東北の遺跡ではDNA鑑定によってクリが栽培されていたことが分かりました。ほとんど農業といってもよいですね。
さて、このように山海の珍味に恵まれていたのにどうして丸木舟が必要だったのか?
丸木舟の材料となる大木は石斧で根気よく倒すことができました。実際に研究者が石斧で中くらいの木を叩いていましたが、以外にスムーズに倒していました。縄文人は倒した大木をそれまた根気よく石斧で底を削っていきました。スタジオの女性のタレントもためしていましたが、これは根気のいる仕事でした。丸太から舟ができあがるまでは2、3ヵ月以上はかかったでしょう。
ここまでして縄文人は何をしようとしていたのか?当時、鳥獣をしとめる最高の手段は弓矢でした。鏃(やじり)の材料となる金属は弥生時代まで待たなければなりません。一番、鋭い石器はガラス質の黒曜石でした。北海道では十勝石としてアイヌが使用していましたが、本州の本土ではほとんど採掘されませんでした。どのようなきっかけか分かりませんが、縄文人は伊豆七島で黒曜石が採れるという情報を得ました。そこで勇敢にもエッチラオッチラ丸木舟を漕いで黒曜石をもとめて島をめざしました。
番組では八丈島にイノシシの牙で作られた釣り針が発見されたことから、本土からイノシシを運んで飼育したのではないかとの説を紹介していました。これはさすがに無理だと思います。現在、日本中、クマ被害に怯えていますが、イノシシの暴れぶりも相当なものです。おとなしく丸木舟に納まるようなタマではありません。八丈島からは本土各地の土器も発見されています。洋上の孤島でサミットが行われた可能性もあるとのこと。
縄文土器は「太陽の塔」を制作した岡本太郎が、その芸術性を絶賛していました。確かに実用本位のサラッとした弥生土器よりもゴテゴテして存在感があります。縄文時代と弥生時代は歴史で習ったようにはっきり区切ることはできません。西日本で弥生文化が盛んな頃、東北の妊婦の縄文式土偶が人気となり、そのレプリカが西日本に伝わりました。本物は国宝「合掌土偶」として八戸博物館に収められています。やせた姿ですがお腹に妊婦特有の中心線があることから妊婦とされています。
ホモサピエンスが誕生して30万年になりますが、この縄文時代が絶頂期ではなかったかと私は考えます。脳をフルに活用していました。脳は身体活動を制御する基幹です。考えごとにはそんなに脳のエネルギーは必要ありません。その後、中国から西日本に稲作が伝わり、さらに文字も伝わりました。文字によって記録は残り、無理して記憶する必要はなくなりました。そして文明が盛んになるにつれ脳の機能は画像やAIに取って代わってしまいました。現代人の脳は縄文人の脳よりもはるかに劣っています。





