これまで外来を受診された患者さんには、スタッフが「今日はどうしましたか?」と問診していました。そしてあらためて医師のいる診察室に呼ばれました。そこでまた問診がくり返されることになります。この無駄を省くべく9月から原則としてスタッフの問診をやめました。同じことを訊く時間が省けてスッキリしました。逆にこれまでのセレモニーに馴染みの患者さんはいきなり診察室に呼ばれて、「どうしたんですか?」ととまどわれる方もいました。そこで私は「直ドク体制にしたんです」と説明しています。直接ドクターの面接に入るため「直ドク」と言ったのです。私の造語です。
直ドクでも初診の方は問診票を書いてもらっているのでおおよそのことは分かります。私は東洋医学をしているので、患者さんが診察室に入って来た雰囲気である程度の診断はつきます。これを「望診」といいます。さらに患者さんの声の調子で診察を深めます。これを「聞診」といいます。これらの情報を問診票と照らし合わせて確認すべく質問します。これを「問診」をいいます。西洋医学の問診よりも介入度が高く診断が早くつきます。さらに患者さんを触れること、すなわち「切診」で東洋医学の診察は完了です。
「望診」の達人である下田憲先生は、患者さんの放つオーラで八割は分かると言っています。オーラは伝統的な東洋医学の診断で五つに分類されます。青、白、赤、黄、黒です。青いオーラを出す人は自律神経が高ぶっています。イライラしたり眠れなかったりします。白いオーラを出す人は肺の機能に問題があります。赤いオーラはメンタルが不安定です。黄色いオーラは胃腸に問題があります。黒いオーラは生命力に問題があります。私もはじめて下田先生のお話を聞いたときは、ちょっと信じられませんでしたが、最近では六割くらい分かるようになりました。
この診断法はメンタルを把握するうえでも有効です。「うつ」の患者さんは心身が弱っているので赤や黄色のオーラを出す傾向にあります。そして青い患者さんは怒りを抱いています。私の言動がデリカシーを欠いたため青いオーラを出し、しまった!と思った患者さんがいました。いち早く怒りを感じ取ったので、早々に行き違いについて説明したところ、青いオーラは消えてニコニコしてくれました。
こんなことを書いていると、かえって不信の念を抱く方もいると思います。いい加減なことを言っているわけではなく、青は「肝」、白は「肺」、赤は「心」、黄は「脾」、黒は「腎」と中医学のテキストに記載しています。テキストにあるから真実だとはかぎりませんが参考にはなります。これらの五臓は現代医学の五臓ではありません。「肝」とは自律神経の興奮、「肺」はほぼ現代医学と同じです。「心」は循環器系と自律神経系、「脾」は消化器系、「腎」は生命力です。すべて古代の中国人が考えた概念で、杉田玄白らが『解体新書』で西洋医学的な臓器として翻訳してしまったので、その後、延々として誤解が生じてしまいました。私も一時、頭に来て、「五臓の概念なんかで論議したくない!」と主張したら、下田先生が完爾と笑いながら、「約束事として覚えておくと便利だよ」と諭してくれました。確かに便利で、それなりに身についてしまいました。
不正出血の若い女性に胃腸を整える六君子湯を処方したところ、はるにれ薬局の後藤先生が「どうして不正出血に六君子湯なんですか?」と訊きました。「脾虚(脾が弱っている状態)だからですよ」と答えるとすぐに納得してくれました。





