佐野理事長ブログ カーブ

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第718回 忙酔敬語 第32回東洋医学シンポジウム

 9月6日(土)と7日(日)の2日間にわたって支笏湖休暇村で東洋医学の勉強会が開催されました。参加者は12人で7題の発表に対して土曜日は3題、日曜日は4題、それぞれ1時間にわたって和やかなムードでの検討会が行われました。昨年はコロナ明けで4年ぶりの開催でしたが参加者は10人ばかりで、さらに台風のため肝心要の名古屋市立大学薬学部教授の牧野利明先生がWEB参加となったため、ちょっと寂しい感じでした。

 このシンポジウムで私は東洋医学を学びました。最初の集会のときは私は初心者で末席でした。音頭取りした下田憲先生は若々しく精悍な感じでした。そして開催に当たって「自己紹介をしていただくとき、自分がどのような立場で漢方を勉強しているか述べてください。そうしないと用語などの見解が食い違って議論になりません」と言いました。下田先生は富良野幾寅での地域医療に貢献したことで後に赤ひげ大賞を授与されました。

 日本漢方には『傷寒論』や『金匱要略』を基盤とする古方派と、それ以降の処方で治療をする後世派があります。また現在の中国での中医学をモットーとする臨床家がいます。勉強を始めたばかりの私は面食らいました。面食らった、と正直に言えばいいのに古方派の藤平建先生の本を読む機会が多かったので、しどろもどろに「古方派です」と言ってしまいました。自信のない人はウソをつきます。別にウソではありませんでしたが、わだかまりが残りました。今では、どちらかと言えば古方が好きです、と胸を張って言えます。

 漢方を勉強する医師たちは、実力ある師匠をもとめて切磋琢磨します。東洋医学はただ教科書を読んだだけでは伝わらないアートな部分があるからです。私は師匠をもとめて歩き回る機会がなかったので、このシンポジウムの重鎮である下田憲先生と岩崎巌先生を師匠としました。岩崎先生は北大物理学を卒業した後、大阪大学の医学部を出て、さらに藤平先生から古方派の漢方を学んだ異色の臨床医です。私と同時期にシンポジウムに参加した牧田病院の今井純生先生は、岩崎先生が八雲の病院で名声をはくしていた頃、定期的に岩崎先生の教えを請いに通っていたので、今井先生も私の師匠的な存在となりました。 

 土曜日の勉強会の後は夕食、そして会議室で持ち込みのお酒で二次会となりました。二次会では牧野先生先生が持参したマオタイ酒で盛りあがりました。マオタイ酒は53度もある中国の高級酒です。日本では1本5万円もしますが、中国との交流のある牧野先生は留学生がお土産に持ってきた1本を提供してくれました。牧野先生は、漢方薬の主要な生薬である甘草の副作用の研究で世界的な業績をあげています。なぜかこのシンポジウムを気に入ってくださり、シンポジウムは多忙な牧野先生の日程に合わせて開催されています。牧野先生の存在は、アートに走りがちな東洋医学会においてサイエンスの要となっています。牧野先生の発表は甘草の副作用と腸内細菌の関係で、ラットや人糞の解析を熱く述べていました。世界でも独壇場の研究で、自分で発見して発表しては、イヤ、あれは間違っていた、と新たな発見をするというお話しでした。それが3度も4度もくり返しで、内容は難しくはありましたが、研究って楽しいなあ、と思いました。

 期待はしていなかったのに、染みわたる発表をしたのは筑波技術大学出身の殿山希先生でした。ガン患者に対するあん摩治療の効果を分析していました。良い結果が出ることははじめから分かっていましたが、あらためて、あん摩という垣根の低い治療を、ガンだけでなく、広い分野で普及すべきだと感に入りました。