新川市民農園で夏野菜やジャガイモ、サツマイモなどを育てていますが、年々土の状態が悪くなっています。毎年、同じ場所を借りて、それなりに肥料をまいていたのですが今年の土は最低でした。5月に土起こしをすると土は固く煉瓦みたいになっていました。スコップで砕いても石みたいに頑固なので、大きな塊を一輪車に乗せて何回も集積所に捨てに行きました。昨年まではそんな作業は不要でした。
5年前にはじめて農園を借りたとき、まず雑草の除去に苦労しました。懸命に引っこ抜いては集積場に捨てに行きました。それが年々と草取りの必要が少なくなり、丹念な作業のたまものと自画自賛していました。そしてこんな結果となってしまいました。
集積場に捨てに行った雑草やトウキビの茎などは、光合成によってできた産物ですが、水と光のエネルギー以外に膨大にまいた肥料も材料になっています。収穫物は、たとえばトウキビの場合はその大きな本体は集積場行きです。このように苦労して畑に投資した肥料のほとんどは集積場行きとなっていたのです。
6年以上前までは、当院の駐車場のかたすみの舗装されていない場所で農作業をしていました。はじめはゴツゴツだった土は年を重ねるごとにフカフカとなり、ミミズも居着くようになりました。採れた作物以外の部分は畑のかたすみに置いて自然の肥料となっていたのです。しかし、豊かな土壌はすべての作物に適しているワケではなく、やせた土に向く枝豆は出来が今一つでした。
やせた新川農園は枝豆には向いているようで、枝豆の王様ともいわれる「だだちゃ豆」が豊作でした。その他、凶作のときに人類を救うイモ類やトウキビもまあまあの出來でした。最近の温暖化で、昨年はジャガイモよりもサツマイモの方が美味しいのが採れました。うちだけではなさそうで、函館に住む学生時代の同期が、北海道医師会雑誌に収穫したサツマイモの旨さに感激したと投稿していました。
患者さんのなかには農家の方もいます。そこで土の管理について相談したところ、やはり雑草や収穫物のいらない部分は、捨てないで処理して翌年の肥料として利用するとのことでした。ただし十分に処理しないと、生き残った種や根から新しい雑草が復活するので大変なことになりますよ、と教えてくれました。
このように書いていると、まるで私が農作業を楽しんでいるかのように思われるかもしれませんが、まったく逆です。父が花や作物を作るのを生涯の趣味として、それにつき合わされて、子供の時分から草取りなどをさせられました。草取りはしっかり根から取らないとこっぴどく叱られました。花は私が幼少期の頃はチューリップ、そしてバラと対象はグレードアップしました。花を見ても確かに他の家の花よりはみごとに咲きましたが、肥料が臭く、「佐野さんとこのバラはキレイだけど臭いね」と近所の小母さんたちがヒソヒソ話しているのを聞いて複雑な思いをしました。
一生住む家を決めるにあたって、庭と雪かきはしないぞ!と迷うことなくマンションにしました。しかし、食いしん坊の妻が、取り立ての収穫物の美味しさに目覚め、農作業をするハメとなりました。とにかく妻の言うことに逆らわず、奴隷として言われた作業をこなしています。唯一の楽しみは農場を取りまく自然をながめることです。ヒバリが盛んに鳴けば、ひどい環境のどこに餌となる虫がひそんでいるんだろう、と考え込んでいます。