佐野理事長ブログ カーブ

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第698回 忙酔敬語 カラスが襲う。

 私はカラスに嫌われています。その証拠に繁殖期になるとしばしば襲われます。カラスは誰でも襲うかというとそうでもなさそうです。男女別なく、やられる人はけっこうやられますが、反対に「カラスに襲われたことがありますか?」と訊いても「そんなことあるんですか?」と驚く人もいます。

 早朝の通勤で、ときどきスキーのストックを肩にかざして歩いている男性とすれ違いますが、多分、カラス防止のためでしょう。彼もやられているみたいです。

 カラスはいきなりは襲わず、必ず「カー!」と鳴いて威嚇してから襲うそうですが、威嚇から攻撃までの時間が短いので、まるで真珠湾攻撃みたいです。

 「カーラースー、なぜ鳴くのー、カラスはやーまーにー、かーわいーいー子があるかーらーなーくうんだーよー」

 こんな悠長な宣戦布告ではありません。ほぼ威嚇と同時に襲ってきます。私の経験では札幌での地域差はありません。通勤路以外でも市街の大通の木からでも襲ってきます。マンションの入り口の近くの小さな木に止まっている目の前にいるカラスが、横目で私をにらんで「カー!」とイヤな声で鳴いたと思ったらすぐ攻撃して来ました。カラスはタカやフクロウといった猛禽類と違って、目は顔の横についているので視線が合っているかどうかは判然としませんでした。横目だから自分に向かっての威嚇だとは気づかなかったのが間違いでした。至近距離からいきなりやられました。

 この時期、日焼けしないように麻の帽子を被っているので怪我をしたことはありません。急降下して足でアタックするだけです。それでも帽子がなければ頭にかすり傷くらいはつく可能性もあるので要注意です。帽子だけでは不安なら日傘をさすのが一番です。閉じたままでもストックをかついだ男性のように高くかざすだけで効果はあります。

 帽子を忘れて歩いていたとき、カラスの威嚇を受け、手を高く上げました。それでも効果はあったようです。ホント言うと素手ではちょっと怖いので鞄に入っていた袋を手に巻いて応戦しました。

 私がよく見かけるのは丈夫そうなクチバシのハシブトガラスです。あのクチバシでやられたら大変なことになりそうですが、急降下からのアタックなので足だけでの攻撃です。しかし、頭にカラスが止まってクチバシで突かれて怪我をしたという、トラウマになりそうな経験をした気の毒な女性もいます。

 こう書いているとカラスが嫌いだと言っているようですが、反対です。カラスの賢さには敬意を抱いています。賢い動物は遊ぶユトリを持っています。「人間は遊ぶサル」であると言った人類学者がいましたが、ご存じのようにイヌもネコも遊びます。通勤路に二匹のイヌを庭で遊ばせている家があります。一匹の犬が飼い主の投げた円盤をジャンプして捕獲しました。順番を待っている片方のイヌは「早く自分にも投げてよう!」としきりに尾をふっていました。カラスが巣を作るのには大きすぎて役にもたちそうもない木の枝をくわえて意気揚々と歩いているのを見ました。木の上の巣を襲う可能性のない古ギツネに急降下してイタズラしているのを見たこともあります。

 私を襲うのも、私がカラスを好きだと知ってのイタズラなら許してあげるのですが、雰囲気からしてそうではなさそうです。片思いは当分のあいだ続きそうです。