佐野理事長ブログ カーブ

Close

第697回 忙酔敬語 年寄りの時代

 4月15日、朝日新聞と讀賣新聞の見出しに日本の人口が過去最大の89万人減と報じられていました。そして少子化に加え老人の割合が増加し、まるで日本は滅亡するみいな書きっぷりでした。しかしながら他の先進諸国を見ても少子化の傾向は続いており、いきなり何とかしろと言っても無理な注文みたいです。

 私の幼少期の頃とくらべて生活水準は高く、生きていくにはお金がかかります。教育費もばかにはならず、そう簡単にハイさようでございますか、と子供をつくるわけにもいかなくなったいうのが現状です。

 高齢化社会になったら年寄りはどうすればよいのか? 自分で稼げばよいのです。実際に昔は定年は55歳でしたが、1998年には60歳、そして今年からは65歳が一般的になりました。介護施設には65歳から入れるようですが、ほとんどの人はまだまだ稼げます。

 文化人類学者のジャレド・ダイアモンド博士も、先進諸国での少子化対策は不可能なので、老人の労働力に期待するしかないと述べています。

 患者さんに「『サザエさん』の波平さんはいくつだと思いますか?」と訊ねると、たいていは60歳代後半をイメージしているようです。

 「当時の定年は55歳なので、課長クラスだと思われる波平さんは50代はじめですよ」と説明すると皆さんビックリします。

 タクシーに乗ったとき、建築現場を通りかかった際、運転手さんは「私は建築会社を定年退職してドライバーをしていますが、入社したばかりの若造よりもずっと稼げますよ」と悔しそうに言っていました。建築の仕事に対する愛を感じました。実にもったいないことだと思いました。

 私が60歳になったとき、定年でヒマになった中学生の同期の連中から一緒に遊ばないか、みたいなアタックをされ、ちょっと閉口しました。集まったヒマ人たちは悪ガキ時代を彷彿させるほど元気で、コイツらを定年にさせるなんて、つまらん規則を作ったもんだと怒りを覚えました。

 実際に70歳代でも元気な人は大勢います。さすがに80歳を過ぎるとちょっと頼りなくなりますが・・・・。昔の人でも、葛飾北斎は89歳までお蕎麦を食べながら情熱的に絵を描いていました。正確な日本地図を完成させた伊能忠敬は、隠居するのがふつうだった50歳から天文学を勉強して、56歳から73歳で死ぬ寸前まで、全国を測量しました。測量方法は海岸線を歩いてその歩幅から計算するという、誰もマネをしたくない、ほとんどイッチャッてるやり方でした。

 体力・知力は人それぞれです。年齢制限は取っ払った方が万人のためです。老害をおよぼす人にかぎって定年を無視して多大な迷惑をかけているのはご存じのとおりです。

 これだけ健康人口が増えたのは、やはり医療や経済力のたまものでしょう。医療といっても予防医学です。ヒトを含めて動物にとって一番基本的な臓器は消化管です。つぎは次世代に命をつなぐ生殖器です。一番大切な消化管の始まりは歯です。いつ死んでも良い、と言っておきながら命根性の汚い私は、セッセと一日3回、デンタルフロスや歯間ブラシを用いて、夕食後に仕上げのブラッシングをしています。おかげで歯科の先生にあと60年はユトリです、と太鼓判を押され、年寄りの時代の先駆けとなっています。