佐野理事長ブログ カーブ

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第681回 忙酔敬語 イヤイヤ期なんて言うのはイヤです。

 1ヵ月健診で注意していることは上の子の赤ちゃんに対する受け入れ状態です。4歳以上だとほとんどの子が無条件に赤ちゃんを可愛がってくれますが、2歳前後が微妙です。1歳くらいの年子だと双子だと思って対応してね、とアドバイスしていますが、2歳になると「イヤイヤ期で大変です」とたいていのお母さんは苦笑いします。

 私はこのイヤイヤ期という言葉がキライです。自我が芽ばえる大事な時期です。チビなりに主張があるのです。おおかた本能から出てくるまっとうな主張です。それなりに理があるので否定してはいけません。

 次女が里帰り分娩のため2歳の孫娘を連れて来ました。お風呂に入るとき孫娘ははたして「イヤ!」と言いました。次女は言って聞かせるのを信条としているので、「さっきママとお約束したでしょ?」と少しばかり口をひん曲げて言いました。妻もそうだそうだという雰囲気で次女に賛成の意を表していました。

 「お前たちはバカか。こんな子が話し合いに応じると思うのか」

 では私だったらどうするのか?

 「はだかんぼ♪ はだかんぼ♪」

 と歌いながら服を脱がせていきなり風呂場に収容しました。浴槽にはアヒルなどのオモチャが浮かんでいます。はじめポカンとしていた孫娘はじきにはしゃぎ始めました。しかし、その後あらたな試練が待っていました。一緒に浴槽に入ったら今度はいろいろなオモチャや壁の絵などでの遊びに夢中になり「もう出ようか?」と言っても出てくれません。

そこでお湯の温度を上げるという汚い手を使いました。孫はやっと出てくれましたが、因果応報でこちらも茹だってしまいました。

 私は自分が子供の頃の記憶を大切にしています。したがって幼児が喜ぶことや厭がることを普通の大人よりも理解しているつもりです。

 2番目の孫は4月に生まれました。孫娘は複雑そうな表情をしていました。なんだかガマンしているんだな、と分かりました。母親は赤ん坊につきっきりです。ここでジイさんの出番です。

 近所のお散歩をしました。ちょうどチューリップが咲きはじめていました。

 「さいた、さいた、チューリップの花が、さいた、さいた、赤、白、黄色、どの花見てもきれいだな♪」

 最近は白いチューリップもよく見られるようになりましたが、4年前は赤と黄色ばかりでした。白いチューリップをもとめて真剣に孫娘と探しまわりました。そして、とうとう自宅のマンションの庭の一角に白いチューリップを見つけました。チルチルとミチルが夢のなかで『青い鳥』を探しもとめ、よく朝、籠の中のキジバトが青い鳥になっていたというお話しみたいです。このあたりはジイさんの好みが出しゃばりましたが、孫娘は道の途中に落ちている松ぼっくりや草の実を見つけてはしゃがみ込んで拾い集めました。「汚い!」なんて言わないで好きなようにさせました。

 天気が悪くてお散歩ができないときもあります。家内が不在ならマットレスを押し入れに差し込んで滑り台にしました。孫娘はキャーキャー言って喜びました。それ以来、私は孫娘の一番のお気に入りになりました。でもジイさんは疲れはてました。