佐野理事長ブログ カーブ

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第673回 忙酔敬語  ピルの処方

 保険診療での処方のルールは3ヵ月までです。ピルの初回は1シート、本人に合っているかどうか確認して、OKなら次回から3シートずつ処方しています。ピルだけなら院内処方ですが、その他の薬も必要な場合は処方箋を出して薬局で購入してもらいます。

 受診時は体重と血圧をチェックします。体重や血圧が急増する場合は血栓症の恐れがあるからです。若い女性ではほとんど問題はありませんが、ポッチャリで血圧が高くなってきた患者さんには別の薬をすすめます。ごくたまにですけどひっかかることがあります。たいていは40歳代の高齢者です。

 喫煙も血栓症のリスクがあるので要注意です。私は鼻がきくので匂いで検討がつきます。本人が吸わなくても、近くに吸っている人がいれば移り嗅がします。

 3ヵ月毎の処方ですが、それなりにドラマがあります。この時期ですと着ぶくれするので9月よりも1㎏くらい増加しているのがふつうです。寒いと血管が収縮して血圧も若干上がります。でも黙っていないで「着込んでいりためですね」とか「寒いですね」とか、ちゃんと診ていますよ、とアピールします。

 私は食事の摂り方にムラがあるので、2日で1㎏くらいの増減はざらにありますが、20歳代、30歳代のほとんどの方が、ほぼ一定なのには感心します。そんなときも「まるでモデルさんみたいですね」と感想を述べます。

 いつもよりも血圧が高い人もそれなりに理由があります。よくあるケースは時間がなくてあわてての受診。「血圧は変動するのがふつうです」と安心してもらいます。ただし正常範囲内の場合です。

 3ヵ月で4㎏も体重が落ちた患者さんがいました。体重が急に増えるよりもピルの処方に関しては問題はありませんが、尋常ではありません。患者さんを見るとかなりすさんだ様子でした。

 「なにかあったんですか?」

 患者さんは急に泣き出しました。近くにあったティッシュを差し出しました。それで涙をふきながら、今、抱えている問題について語ってくれました。いろいろ混み合っているようなので、心理師による面接を行いました。

 1、2㎏の増減はそれほど大きな問題はありませんが、ダイエットをしたとか、職場が忙しくなったとか、それなりに生活が反映されています。

 血液検査については、定期的に行うべきだとか、体重と血圧をチェックするだけで十分だとか賛否両論あります。肝臓という臓器は、あらゆる毒物の解毒を行っています。しずかに忍んでいますが、たまに検査するのも良いのではないか、と最近は1年に1回のがん検診とともに行うことにしています。

 ピルにもいろいろあって、男性作用があってやる気が出るタイプ、女性ホルモン優位でおしとやかになるタイプ、その中間、と様々です。また、アイスなど食生活が乱れていると不正出血することがあります。そのことも丁寧に指導することにしています。

 ほとんどの患者さんは、厚労省でいうところのかかりつけ医などはありません。こうしてピルの処方とともに健康管理をしているのですよ、と説明すると、みなさん納得されて明るい顔をしてくれます。