クレヨンしんちゃんはピーマンが嫌いですが、私はパプリカがダメです。幼少の頃は、しんちゃんみたいにピーマンが苦手でしたが、小学5年生のとき、母からピーマンを七輪で炭火焼きにするように言われて、少し焦げ目がついたピーマンを醤油につけて食べてからピーマンの美味しさに気づきました。
パプリカはピーマンの新バージョンみたいな野菜です。ピーマンと違って刺激はなく、女子に人気で当院の入院食にもよく取り入られています。いろどりが良く酢豚などの中華料理にピーマンの代わって使われるようになりました。我が家でも市民農園で採れたパプリカの料理の出番が多くなり閉口しています。
どこがイヤだと言うとまず香り。中途半端な甘ったるさが好きになれません。噛むとピーマンよりも水っぽい。これもイヤです。ピーマンとパプリカは近い品種ということは子供の時分から気づいていました。スーパーで売れ残ったピーマンの一部が赤くなっていたのを見て、なるほどこうなるのか、と思いました。パプリカはそんなピーマンの慣れのはてが市民権を得て、ドーダ、偉くなっただろう、とふんぞり返ったような感じで、これも好きになれません。
ビタミン類はパプリカの方がピーマンよりも多いそうです。黄色のキウイが緑のキウイよりも段違いにビタミンCが多いのと同じですね。ふつうの人にとってはパプリカの方が刺激が無くて生食もできると、調べれば調べるほどパプリカが優勢です。
そういえば昔、フジテレビ系で『料理の鉄人』という番組がありました。そのオープニングで、司会の鹿賀丈史さんが黄色いパプリカをパクリとかぶりつくのがキザったらしくて印象的でした。「ピーマンを生で食うのか?」と驚きましたが、マネしてみると爽やかでした。なまじ火をとおして変な香りを出すよりも生の方がよっぽど良いぞと思ったことでした。
ここでふと自分の幼少期からの好みについて思いおこしました。小樽にいた時分、近所の原っぱに生えているシロツメクサやアカツメクサの花びらをむしって蜜を吸うのが好きでした。入江敦彦さんが『京都人だけが知っている』で、ご自身が花の蜜を吸うのが好きだったと書いてあったので、似たような人がいるもんだなあ、と少し安心しました。小樽の蜜吸い少年はある雑草の葉も好きでした。酸っぱみがあってエグミはありません。年長の子供と相談しながらいろいろな草に手を出しました。それで食べられる草とまずくてダメな草を覚えましたが、残念ながら今は記憶から消失しました。酸っぱい草はきっとサラダにしても美味いはずです。現在、多くの人がクレソンのサラダは栄養価も高くて美味いと言っていますが、私は正直言ってクレソンの苦みが苦手です。
トリカブトや大麻などのヤバイ毒草もあったはずですが、いきなりガブリと食べることはなかったので、今を生きているのでしょう。酸っぱい物好きな少年は熟したグズベリーよりも青いグズベリーが好きでした。サクランボもまだ赤くなっていない青い実を採って食べました。あるときお腹をこわしたら、母に「あんな青いサクランボを食べるからだよ」と叱られました。しかし、今思うにどうして青いサクランボを口にした瞬間に注意しなかったんだろう、と母の真意を疑いました。
人の好みは様々です。パプリカでもピーマンでもお好きなようにしてください。