佐野理事長ブログ カーブ

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第655回 忙酔敬語 ネタが無いなんて・・・ 

 6月下旬の梅雨入りの頃、『プレバト』のお題は「雨の行列」でした。梅沢富美男特別永世名人は、このところ6回連続のシュレッダーで絶不調。名人剥奪の危機をむかえていました。背水の陣で詠んだ句。

 遙かなる長持唄の喜雨をゆく

 遥か彼方から婚礼の唄を歌いながら恵みの雨の中を長い行列が進んでいる、という昔の田舎の風景を詠んだ句です。五七五の中によくもこのように雄大な風情を詠み込んだものです。はたして結果は「お見事!」。はしゃぐ梅沢に夏井先生はピシャリと言いました。

 「聞くところによるとオッちゃんは、『もう、俺にはネタが無い』と言ってるそうですね。俳人たる者、口が裂けてもネタが無いなんて言ってはいけません!」

 オッちゃんは目を白黒させて口をおさました。

 「俺は内緒話もできないのか・・・」

 昨年、日本東洋医学会会長になった三谷和男先生は、医学雑誌『日本医事新報』で東洋医学に関する話題を連続3週にわたって提供しました。そのなかで印象に残った記事は、先達に学ぶことで一番大切なのは感性である、ということでした。感性があれば先達だけでなく、日々の診療で患者さんからも新しい発見が得られるものです。

 私は本職の日本産婦人科学会の他に、日本心身医学会、日本東洋医学会などにも所属して世話人をしています。産婦人科学会は現代医学の柱の1つなのでゆれ動くことはありませんが、その他の2つはちょっと頼りない状況です。心身医学は医学の根源のはずですが、一般医には病状の姿が見えにくいのか敬遠され、学会は先細りです。東洋医学は私にとって心身症治療の大きな手段の一つです。これは漢方薬エキス剤が保険適応になっているため、何とか頑張っていますが、何せ新しい発見が少ないのか、北海道支部での一般演題数はパッとしません。 

 ロートルがいくら、演題を出せ、と言っても説得力がないので、みずから演題をたずさえて参加しています。

 今年2月18日の日本心身医学会北海道支部例会では、「交流分析『時間の構造化』に関する疑問」という発表をしました。それでも一般演題数は4題と、今までの例会の歴史で一番少なかったのではないかと思います。来年の演題はすでに決まっています。最近、経験した事例をもとに構想したものです。「女性の幸福」について考えました。やっつけ仕事ではありません。

 今年の10月6日に日本東洋医学会北海道支部学術講演会があります。目玉の特別講演は、三谷和男先生の快諾を得ているので大丈夫ですが、一般演題がなかなか集まりませんでした。10題は欲しいところなので、私1人で2題エントリーしました。「月経前不快気分障害に対する苓桂朮甘湯加竜骨牡蠣の効果」と「自殺念慮に対する鍼治療の4例」。

 学会講演会はピアノの発表会みたいなものなので、人の話をいくら聞いたって上達しません。みずから発表して少しくらい恥をかいたって殺されることはありません。ネタが無いと言う方がずっと恥ずかしいことです。※結局12演題の応募があり盛りあがりそう。