佐野理事長ブログ カーブ

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第650回 忙酔敬語 ハスカップジャム 

 東洋医学会でご一緒の鍼灸師の南雲三枝子先生にハスカップジャムをもらいました。三星の苫小牧市民還元435gという大きな壜でした。私は糖質ダイエットをしているので、こんな物もらっても困るんだけどなあ、と思いましたが、「カラダに良い」と言うので舐めてみるとこれが実に美味い!8日間で食べつくしてしまいました。

 一般的にジャムはパンに塗るとかヨーグルトに入れて食べられていますが、欧米ではそのまま食べることが多いようです。イギリス帰りの夏目漱石もその影響を受け、奥さんが心配するほどジャムを舐めていました。なんでも1ヵ月に8壜も食べたそうです。その様子は『我が輩は猫である』にも書かれています。

 映画『戦場のピアニスト』でナチスからのがれて餓死寸前の主人公が、ピアノの腕前をかってくれたナチスの将校にこっそり食料をあたえられる場面がありました。そのときジャムを舐めて上を向いてウットリするシーンは実に印象的です。そうか、ジャムってそんなに美味いのか・・・。それ以外は暗い作品なので思い出したくもありません。

 ロシア人は紅茶をロシアンティーと言われる飲み方をしています。日本では紅茶にウォッカかブランデーを垂らしてジャムを混ぜて飲んでいると誤解されていますが、本当は、お茶請けのように様々なジャムを食べながら紅茶を楽しんでいると、テレビの料理番組を見た母が教えてくれました。そう言えば『アンナ・カレーニナ』に貴族の女性たちが水を加えないで苺ジャムを作る場面がありました。

 高校生のときの寮でのこと。紅玉を買い込んでマネをしてみました。紅玉は香りが高くお菓子を作るのには最適です。私は幼少のときからリンゴはあまり好きではありませんでしたが、寮の食事ときに出された紅玉の深い味わいにビックリしました。ただしフジのように長持ちしなく、すぐにぼけてしまいます。その紅玉を適当に切って鍋に入れてグラニュー糖をかけてしばらく置いておきました。紅玉から水分がしみ出てきた段階で弱火で煮込んでいきました。寮中に甘い匂いが漂い見事なジャムが出来上がりました。飢えた寮友どもが群がってきてたちまちジャムはなくなりました。

 紅玉の正しいジャムはこのように香り高く美味しいものです。しかしながら私が幼少のみぎり、正しいジャムは多くはありませんでした。今思うに給食で出されるイチゴジャムはいい加減なリンゴジャムを赤く着色していました。なぜそんなことが分かるのかというと、リンゴジャム独特のザラザラ感があり、さらにはイチゴの種のプチプチ感がほとんどありませんでした。私はこのジャムが大嫌いで、あんパンやクリームパンと張り合っていたジャムパンが幼稚園の給食で出されると、四苦八苦しながら少しずつかじっては飲み込みました。昔は食べ残しは大きな罪でした。

 お前はガキの時分からそんなにツウだったのかと言われそうですが、同時に提供されたチョコレートパンは大好きでした。当時のチョコレートパンはクルクルとロール巻きにしたパンの中にほんの少しのチョコレートクリームがしのばせてありました。ロールパンを懸命にチョコレートクリームが現れるまで頑張って食べました。そのチョコレートクリームも今思えばあやしい物でした。砂糖の代わりに合成甘味料が入れられたりするのがまかり通っていて、昔は良かったなあ、なんてウソっぱちです。

 以上、正しいハスカップジャムで色々な記憶がよみがえりました。