子宮頸がんについてはHPVワクチンとか定期検診とか啓蒙活動がさかんで、今後は欧米に習って子宮頸部に潜むヒトパピロマウィルス(HPV)を中心に検査することになりそうです。そうすると検診は3年から5年おきでOKとのこと。子宮頸がんはHPVが侵入してから数年たって発症するからです。患者さんの負担も少なくなるし医療費削減にもなります。しかし本当にそれでいいの?
実は最近、子宮体がんが増えてきて頸がんと並ぶようになりました。体がんの原因は女性ホルモンが関与すると言われていますが、もう女性ホルモンとは縁のない高齢の女性でも発症することがあります。体質的な問題ととらえてもよいでしょう。
症状は不正出血です。少量の出血がダラダラ続くようなら要注意です。最初の検査は経腟の超音波です。子宮内膜がごく薄ければまず問題はないでしょう。ちょっと怪しければ子宮口から検査用のキットを挿入して細胞診をします。もっと怪しければ子宮内膜の組織を採取して病理検査をします。
札幌医大の斉藤豪教授はこの分野の指導者で、欧米では細胞診の的中率は低いのですべて病理検査をすると言っていました。また、けっこう楽観主義者で「頸がんと違って出血してからでも遅くないので、治療成績は良いですよ」とニコニコしています。
70歳前半の患者さんが「昨日から出血しています」と言って受診されました。超音波検査をしたところ、子宮内膜が厚くなっていてかなり怪しかったのでいきなり病理検査をしました。この年齢になると子宮口は狭くなっているのでキットが入りづらいのですが、さいわいにもスンナリ入り組織を取ることができました。結果はやはり初期の体がんでした。さっそく札幌医大へ紹介しました。
更年期に入った女性が何度も出血をくり返していました。必要に応じて子宮内膜の細胞診をして経過をみていました。出血はそのたびにホルモン療法で止まりました。あるときホルモン療法でも止まらなくなり、これは怪しいと組織検査をしたところ、癌とは言いきれないが怪しいのでさらに精査するするように指示がありました。当院の晴朗院長は斉藤教授の愛弟子で婦人科腫瘍が専門です。報告書をチラッと見てすぐに医大への紹介を勧めました。やはり癌の初期で手術だけで治療は終了しました。
40歳代で出血をくり返す患者さんがいました。超音波検査では子宮内膜が厚くなっていました。病理検査を試みましたが子宮口が狭くてキットが入りません。ちょうど通りかかった院長にバトンタッチを要請しましたが、勘の良い院長はMRI検査を勧めました。
やはり初期の体がんの疑いありで札幌医大へ紹介しました。
以上はすべて最近半年以内のことです。子宮体がんは昔ほどめずらしくはありません。 食生活も関係があるように感じます。平成4年から8年までの4年間、北見赤十字病院に勤務した頃、体がんが頸がんよりも多く、日本も欧米なみになったもんだなあと感じ入りました。ところが当院に来てからはやはり頸がんが多いことが分かりました。その後はジワリジワリと体がんが増えてきました。北見は焼肉天国で、焼き肉店数は人口比日本でトップとのこと。それ以外でも空き地があれば休日は焼肉パーティーしており、まさに食肉文化の地でした。そのためか他の地では珍しい病気もあり、あらためて昭和後期の和食がベストであると思ったことでした。