毎朝、長さ85㎝・重さ3㎏の鉄棒を60回、それから長さ114㎝・重さ1㎏の樫の木刀を60回振っていました。一応、居合いの基本動作にのっとって行っていました。いろいろなスポーツがある中で、なんでこんなことをしているのかと言うと、いざという時のためです。いざという時?そう、いざという時です。世間にはいろいろな人がいて、話し合いでは決着がつかず、暴力で挑んでくるケースもあります。さいわい、まだ暴力沙汰になったことはありませんが、防衛のための備えとして理解してください。仏教の世界でも剣道や柔道をたしなんでいるお坊さんは少なくありません。典型的な例として少林寺を思い浮かべればよいでしょう。少林寺は攻撃のためではなく、防御のための武道です。まっ、自衛隊みたいなもんですね。と言うか自衛隊よりも物騒ではありません。
真言密教のトップである大日如来は、教え諭しても分からない輩(やから)を恫喝するために、恐ろしげな不動明王に姿を変えて対応します。その他、国宝級の仏像で知られる四天王も力で正義を守っています。佐野はイッチャッタのか?と思わないでください。不動明王や四天王の道を目指して精進しているのです。
はじめは1㎏の樫の棒を100回振っていました。ある日、産経新聞の広告で、練習用の3㎏の鉄棒の存在を知りさっそく購入して、以来、それぞれ60回ずつ振るようになりました。そして、さらにある日、本当にいざとなった時、これらの棒で対処できるのか?という疑問がわき起こりました。暴漢が院内であばれたとき、114㎝の木刀は長すぎて役にたちそうもありません。3㎏の鉄棒は重すぎて自由にあやつれません。
胴太貫(どうだぬき)という短めですが厚みのある剛剣があります。実用本位の刀ですから美術的な価値はありません。父が生前、中国戦線での体験談をしました。
「あの何とかダヌキという刀は実によく切れたなあ。短いけど分厚くてナタ代わりに丸太を割るとスパスパ切れたぞ」
「それって胴太貫だろ?」
「そうだ!よく知ってるな」
珍しくほめられました。
しかしながら胴太貫を手に入れても仕方ありません。日本刀を所持するには面倒な手続きが必要です。それに相手に打撃をあたえればよいので斬る必要はありません。そこで考えたのが短めの鉄棒です。よく「バールのような物で殴られた」と報道されますが、そのバールのような物を探しにホームセンターに行きました。鉄製のバールは釘抜きなどの類いで、武器にしたくなるような代物ではありませんでした。ふと横を見ると鉄(ステンレス)パイプのコーナーがありました。建築資材を補強するなどの多目的なパイプです。あれこれ手にとってみると直径35mmがフィットしました。91㎝の長さが振りまわすのにちょうど良さそうでした。レジに持って行ってもお姐さんはあやしげな顔はしませんでした。あとで重さを量ったら700gで、日本刀の脇差し相当で希望どおりでした。
以来、鉄棒60回、木刀60回、鉄パイプ60回と計180回振っています。鉄パイプの60回はオマケみたいなものなので苦にもなりません。これで向かうところ敵無しです。武道を極める?と精神状態も安定します。実戦で使うことはまずないと思われますが、体力と胆力維持のために毎日休むことなく鍛錬しています。