佐野理事長ブログ カーブ

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第593回 忙酔敬語 体に悪い食事

 私はもともと太りやすい体質で、欲望にまかせていると1年で10㎏くらい増えて、学会用のスーツがパッツンパッツンになり、焦ってダイエットするという生活をくり返していました。ダイエットも過激で1ヵ月で10㎏落としたことが何回かありました。

 そんなある日、新聞の広告で夏井睦著『炭水化物が人類を滅ぼす』というあやしげな新書が目にとまりました。はじめは「バカバカしい」と無視していましたが、朝日新聞の書評で絶賛していたのでついに買い求めました。

 一言で言えば、人類は農業をいとなむ以前は狩猟・採集の生活をしていて、そもそも大量の炭水化物を利用できる体ではなかったので、炭水化物を取りすぎると不調をきたすのは当然とである、との内容でした。私はそう簡単に洗脳されるタチではないので、農業によって持続可能な炭水化物の摂取ができたおかげで人類は繁栄するようになったではないか、といまだに「人類を滅ぼす」とは大げさだと考えていますが、まあ、とにかく炭水化物ダイエットをしてみました。それが効ありで、いまだに自分にあった体重を維持して、アップダウンのない人生を送れるようになりました。

 昔、『暮らしの手帖』で「もっと油を摂ろう」という企画があり、脂肪を摂れば太るではないか、という疑問に対して、ヒョウの写真を提示して、「肉食動物は蛋白質の他に脂肪を摂っているが太ってないでしょ」と解説していました。ではクマはどうなんだ?と思われるでしょうが、クマは雑食で、食事の8割以上を植物に依存しているそうです。

 具体的には毎朝、煎り大豆120gをポリポリ食べています。当直があたっていなければそれで終わり。当直だったらさらに朝食を摂ります。小麦は禁なのでパンはまったく手をつけません。たまに食べると体がだるくなり「オレはバカだ」ということになります。和食は白いご飯の誘惑には勝てず完食。半分だけ残すなんて罰当たりなことはできません。病院での昼食はおかずだけ。夕食は家族が白米を食べても自分だけオーツ麦を炊いてドンブリにたっぷり一杯食べます。オーツ麦は玄米より軽く、すでに熱処理されているので4分くらいで炊きあがります。意外に和食と合います。漬け物、魚などをおかずに最後は味噌汁をかけて終了。たくさん食べても胃もたれはなく、さらに罪悪感がありません。全体的に繊維質が多くなるため非常に快便で、最近増えている大腸がんの予防になります。

 子供の時分から一番好きな食べ物はラーメンでしたが、病院の昼食でたまにラーメンが出ると、食後、2時間くらい体がだるくなります。カレーの時も大豆にカレーをかけると白い目で見られるので、結局、ご飯を食べて体がだるくなります。若いときには気づきませんでしたが、この歳になると何が悪いかは体が反応するので分かります。蕎麦、とくに十割蕎麦は大丈夫です。妻が呆れるほど食べても翌日それほど体重は増えていません。

 甘い物は血液の巡りを悪くするので、患者さんには「やめなさい」と言っています。しかし、お中元やお歳暮などで医局にスウィーツがある場合は思わず手を出して気分が悪くなり「オレはバカだ」ということになります。下腹部痛を訴える患者さんに桂枝茯苓丸という血行を改善する薬を処方したところ、「最近、甘いの物が平気で食べられるようになりました」と喜んでくれましたが、順序が逆で、甘い物禁止令を出すのを忘れていたのに気づきました。アルコールはヘロインよりも危険です。昔は浴びるほど飲んでいましたが今は原則禁です。たまに飲むと二日酔いはしなくても翌日いっぱい体調不良になります。