佐野理事長ブログ カーブ

Close

第589回 忙酔敬語 働くことは悪いことか?

 月に4、5回当直をしますが、日本全体の出生数減少のあおりを受けて、夜中にお産で呼ばれることは以前よりも少なくなりました。それでも時には分娩ラッシュに遭遇することもあります。

 3月17日(土)の午前中の外来診療が終了してからは、前日から陣痛のために入院している初産婦さん以外はとくに問題はなくノンビリと過ごしていました。

 『サンド&多志田愛菜の博士ちゃん』で、”ドリフ大好き博士ちゃん”大沢沙夜さん(17歳)が、サンドさんたちが驚くほどドリフに関する研究と深読みを披露しました。別室では加藤茶さん(80歳)がその様子をモニターで見ていて、最後にサプライズ面談。沙夜さんはビックリのあまり声が出ず、加藤ちゃんもよくぞここまで入れ込んでくれた、と目を輝かせていました。私もちょっとウルッと来ました。

 番組終了後、ナースステーションに行くと、初産婦さんはいいとこまで行っているが陣痛が弱くておそらく朝までには生まれないだろう、また別の初産婦さんが破水で入院したが子宮口が閉じているので、この方も生まれそうもない、ということでした。しかし、いつ起こされるのか分からないので早めに寝ました。

 

 3月18日(日):午前3時34分、生まれないはずの初産婦さん分娩。

   同  日  :午前4時20分、未明に入院した経産婦さん分娩。

   同  日   :午後0時44分、初産婦さん、2日がかりで分娩。

 最初のお産で呼ばれたときは、ちょうどお産の夢を見ていました。寝ても覚めてもお産です。初産なのに落ちついていて「会陰切開を入れてください」と要望されました。なんでも従姉妹が別の産院でお産したとき、自然にできた裂傷があまりに痛かったので会陰切開をすすめられたそうです。タイミングを見はからって局所麻酔をして切開しました。赤ちゃんの頭が見えてきたあたりで切開したので、本人も切開されたことに気づきませんでした。エヘン、こうでなくっちゃ。その時点で夜間に入院した経産婦さんが声を上げはじめたので助産師Wさんは手をおろし、私が10年ぶりにお産の介助をしました。昔取った杵柄、われながらアッパレな介助でした。

 初産婦さんの会陰切開の縫合が終了した時点で、経産婦さんがお産となりました。会陰の傷は小さかったので、2針ぬっただけでおわりました。その時間帯はふだんは起床して行動開始しているので、もう寝ないで、そのままブログを書いたりして過ごしました。

 7時過ぎに詰め所に行ったところ、2日がかりの初産婦さんは全開して、赤ちゃんもそこまで下がっているが、疲れて陣痛が間延びしているとのことでした。日勤者が集まった時点で注意深く陣痛促進剤を点滴しました。さいわい、お母さんはまだやる気十分で赤ちゃんも元気。赤ちゃんの頭が見えかくれするのを待って、会陰切開して吸引分娩をしました。満を持しての吸引だったので一発で赤ちゃんが出てきました。なんと4000g超えのビッグサイズのベビーでした。立ち会いのパパは安堵と感激で涙、涙。

 産婦人科医が働き過ぎだと問題になっていますが、このようにやりがいがある仕事なのでツライとは思いません。たまに働き過ぎるのは、そんなに悪いことなのでしょうか?