佐野理事長ブログ カーブ

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第565回 忙酔敬語 代用食

 「テンプンタンコノタイヨウショククタサイ」

 小学6年生のとき、担任のT先生が、朝鮮人は濁音が発音できないから、親からお使いにやらされた子供が店でこう話していた、と言いました。

 正しくは「でんぷん団子の代用食ください」です。

 T先生を尊敬していた私は二重の意味でガッカリしました。

 一つ、朝鮮人蔑視。これは今では考えられないほど根強いものでした。差別は理屈ではどうしようもない化け物でした。

 私の父は山梨県出身でした。そのあたりから東側では西日本のような部落差別もなく、父は開放的でした。仕事関係でお世話になっている韓国の方を家に泊めたこともありました。戦後、シベリアに抑留されて散々な目にあっているのに、「ロシア人は個人的にはいいヤツらだ」とラジオでロシア語会話を勉強していたほどです。

 その影響で私も朝鮮人蔑視の発言に生理的な不快感を覚えたのでした。

 もう一つは貧乏人に対する蔑視。代用食とは白いお米が食べられない貧しい人たちの食べ物でした。当時の池田勇人総理は「貧乏人は麦を食え」と言いました。それに対して父は「ヒドイことを言うなあ」と怒っていましたが、総理みずから麦ご飯を食べていることを知り、少しは納得したようでした。

 現在、小麦が不足して全世界が困っています。小麦の白いパンは日本人の白いご飯に相当します。昔、映画『ハイジ』で、幼いハイジが歯の悪いお婆さんのためだと白パンを集めてクローゼットに隠すシーンを見て、白いパンのどこが良いんだろう、と不思議に思いました。その後、父がライ麦100% の黒パンを買ってきたため、白パンの良さが分かりました。父は酸っぱくてパサパサした黒パンにマーマレードをタップリ塗り、シベリア生活を懐かしがっていました。懲りない人間でした。

 私は糖質ダイエットのため、白米と小麦は原則として摂取していません。体重は安定しているので、現在はたまには食べます。でも白いご飯と小麦のパンは食後数時間カラダがだるくなり、やっぱりオレには合わないんだな、と実感します。

 そこで代用食の出番です。毎朝、かかさずマックスバリュの煎り大豆120gをポリポリやります。それだけで朝食はほぼ十分ですが、当直での朝食が白いご飯のときは、それも全部食べます。本当言うと白いご飯が好きなのです。ご飯を少し残すなんて芸当は出来ないので、手をつけるかつけないかオールオアナッシングです。パンはビニール袋に入っているのでそのまま下げます。

 家での代用食はオートミールです。欧米人のようにドロドロに煮るのではなく、オーツ麦1カップに水1カップを加えてさっと炊きあげます。米飯と比べて軽さが実感できます。洋食よりも魚の煮付けや味噌汁に不思議と合います。ウナギの蒲焼きだと食感といい色合いといいベストマッチです。

 炭水化物ダイエットを始めたとき、好物の二八蕎麦の大盛りもやめましたが、十割蕎麦だと不思議に胃にもたれなく体重にもさほど影響を与えません(個人的感想です)。

 人間はもともと何でも食べられるということで繁栄してきました。足りなくなった物には未練を断ちきって、あらたな食物にチャレンジすればよいのです。