国際高校と北成病院の間くらいにある札幌市が提供してくれた農園です。1区画が100平方メートルで利用料金は20,000円。あたりは広々として空からはヒバリがピーチクパーチク、遠くからはカッコウの声も聞こえて気分が晴々とします。
しかし、土壌がひどい。同じ区画を2年耕して、今年で3年目になるのに耕すと硬い土塊がゴロゴロしていて、畑よりも陶芸の粘土に向いているんではないかと思うほどです。もちろんミミズはいません。
ここで思い出したのが「君が代」の歌詞。
君が代は千代に八千代に細石(さざれいし)の巌となりて苔のむすまで
自然界では、大きな岩石が風雨や河川あるいは氷河によって小さい石や砂となるので、これでは逆ではないかと言われてきましたが、新川のねっとりした土を握って「君が代」の言うことも当たっているかもしれないと思いました。
新川の土が長年堆積していると本当に巌になってしまう可能性があります。ただし、巌が土になるよりも何万倍の年月が必要です。長い年月を祈る歌なので、こっちの説の方が迫力があるなあ、とヒバリさえずる空の下で考えました。
昔は肥えた土にするため、日本人は多大な努力をしました。家畜や人の糞尿では飽き足らず、蝦夷地まで行って大量のニシンを捕獲して肥料としました。人間が食べるんじゃないんですよ。ニシンかすに加工して畑に撒いて木綿の栽培に利用したのです。半端な漁ではないので、網元はガッパガッパと富を手に入れニシン御殿なるものまで建てました。それにしても木綿は肥料食いの作物でした。
小学生のときの担任、木田先生の言葉を思い出しました。
「油かすって意外に美味いよ。子供の頃(まだ戦前)、大きな油かすの袋が破れているので、ほじくってみると良い臭いがした。食べてみたらそれが美味かったんだ」
いくら食料のない時代とはいえ、畑の肥料に手を出した先生に呆れましたが、油かすの材料が新鮮なニシンの可能性ありと悟った今、やっと「美味しかった」理由が分かりました。新川農園でボンヤリ哲学をしているうちに60年間の謎が解明したのでした。
地球上の生物のなかで総重量が一番大きいのは何でしょうか? 正解は細菌です。あんな小さい物が?と思われるでしょうが、豊かな土壌の表層の10%は細菌が占めると何かで読みました。ただし表層の1メートルの範囲です。地球上で豊かな土地はかぎられていますが、それでも土の10%ならとんでもない総重量になりそうです。
新川農園の土では細菌は多くはなさそうです。しかしながらすべての作物が豊かな土壌を必要とするわけではありません。豆科の植物にはかえって成長の妨げになります。農園を借りる前、当院の駐車場の片隅に畑を作っていました。屯田の土もやせていましたが、年々、肥料を撒いているうちに土は黒々と豊かになり、ミミズも住むようになりました。しかし、お目当ての枝豆、とくに高級種の「だだちゃ豆」の収穫が今一つでした。それが昨年、やせた新川農園では豊作でした。
本当は、畑仕事は好きではありませんが、このように生態系を哲学するには最高です。