院長ブログ カーブ

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第540回 忙酔敬語 医学生・研修医の陪席

 当院は心身医学指導施設および東洋医学指導施設なので、医学生や研修医が研修のために陪席することがあります。学生はまだ知識がとぼしくて何を訊いてもビビルことが多いので、だからこそ患者さんの前で「バカヤロ」とは言えないので、元劣等生の私はやさしく接することにしています。それに対して研修医は医師国家試験を合格した本物の医師で、最新の医学について幅広く詳しく知っていて、我々の専門外のことに対しても的確に教えてくれ、生き字引みたいで便利な存在でした。

 医学生や研修医が研修に来てくれるのは、我々にとっても刺激になって歓迎です。私は朝早くから医局に来ているので、緊張した面持ちで入って来た若者を屋上に案内して近辺の景色を説明します。はるか南の彼方に札幌ターミナルタワーが見えます。

 「夏になると豊平で花火大会があるけど、遠いので花火はこのくらい(500円玉)で、ピカッと光ってしばらくたってからポンと聞こえるんだ」

 北西には石狩市の風力発電機が10基近くユッタリと回っています。

 「あの近くにコストコがあって、ポッチャリ系のヤンママは36個入りの丸パンを買って、家に帰るとすぐに5個も6個もいっぺんに食べてしまうらしい」

 近くにはヤマダ電器やヨーカドー、ジョイフルがあります。

 「開院当時はセイコーマートが1件あっただけで何もなかった。あのヨーカドーあたりも立地の候補だったけど奥まっていてここで良かったよ」

 最近の医学生や研修生を見て感心するのは礼儀正しいことです。授業の一貫としてロールプレーが組み込まれているとのことです。私が札幌医大産婦人科の医局長だったとき、あまりにもヒドイので電話の受け答えのノウハウをたたき込もうかなとも考えましたが、多忙のまま1年の任期が過ぎてしまいました。医局長の仕事は診療以外に当直表や月間出張などを作成したり、教授が手術の執刀者を決めたらその助手を選んだり、その他色々でとにかく大変でした。接待のため酒量が増え、それまでの日課だった朝のジョギングもおろそかになり、体重が10㎏も増えました。

 話がそれました。医学生や研修医を派遣するとき教授はそれとなく産婦人科への勧誘を期待しているようですが、それは本人の選択にまかせています。でも様々な患者さんを診ることで「なっ、退屈しなくて面白いだろう?」と自分がいかに充実しているかをアピールしています。産婦人科、とくに産科はトラブルが多いため研修医は敬遠すると言われていますが、そんなことで腰が引けるようでは仲間にはなれません。患者さんのご家族からクレームが来たときは「どうだ、一緒に話を聞かないか?」と研修医を誘ったことがありました。その研修医はすでに呼吸器内科を志望していましたが、そんなことは関係なく医療の現実を知ってもらおうと考えたからです。はたして彼は「コワイですねー」とビビリました。何を訊いても即答する優秀な男で、今では第一線で活躍していることでしょう。

 でも正直言って産婦人科を選択してくれた学生や研修医がいるのは嬉しいことです。髙橋円先生が6年目のとき夏休みに当院で研修しましたが、心身症にも興味を持って、その年の医局の忘年会のおり「産婦人科に決めました」と言って私と同じテーブルに座ったときはヨロコビのあまりストレートのウィスキーをダブルで6杯も呑んでヤバイと思い、途中で退席して家に帰りましたが、雪のなかでぶっ倒れ、もう少しで死ぬところでした。