院長ブログ カーブ

Close

第529回 忙酔敬語 我が自律神経失調症

 他科で自律神経失調症と診断された患者さんによく言う言葉。

 「それは医師がギブアップ宣言したような意味です。お年頃の女性なら更年期障害とも言われます。とりあえず何とかしましょう」

 自律神経は内臓の機能を調整する神経で、交感神経と副交感神経からなり立っています。交感神経はイケイケの状態へ、副交感神経はまあ、抑えて抑えて的な方向へ調整します。当然、緊張して働いているときは交感神経が、リラックスしているときは副交感神経が優位に働きますが、どっちだけが働いているということはありません。心臓の働き一つとっても状況に応じて常に交感神経と副交感神経の微妙な調整のもとにあります。副交感神経はリラックスだからと良いのだと言われがちですが、この神経が暴走すると血圧が下がって心臓停止という状態にもなります。ようするにほどほどが大事なのです。

 自律神経失調とは血液検査などでハッキリした結果がでない患者さんに説明するのには便利な病名です。だから私は「医師がギブアップ宣言した」と言ったのです。ではそんな病気は存在しないのか、と言うと実は存在します。かく申す私がそうなのです。

 私は基本的に低血圧です。低血圧だと頭に血が昇っていかないので長時間立っているとフラフラします。歩いているときは交感神経も働いているので、通勤中にぶっ倒れるということはありませんが、長時間の手術はダメです。3年ほど前、夜間に100㎏越えの妊婦さんの緊急帝王切開がありました。自前の麻酔でしたが何とか入りました。なんせポッチャリなので赤ちゃんを出すのにやや手間取りました。子宮も何とか縫い合わせて出血も止まりました。私の緊張も取れました。するとめまいがして立っていられなくなりました。「オイ、椅子!」と叫んで座りこみました。スタッフは低血糖だと思ってマスクの透き間からストローを入れて「先生、飲んで!」と言ってくれましたが、私は「バカたれ!血圧が下がっただけだ」と憎まれ口をたたいて、また手術再開。結局、手術が終了するまで計3回へたり込みました。オペ室から出て血圧を測ったところ、めまいほぼ治まっていたのに96/70とまるで女子中学生のような結果でした。多分へたり込んだときは測定不能と出たかもしれません。ヤワなカラダです。

 そんな低血圧オジさんが、昨年、大腸カメラを受けたとき、看護師さんに「まず血圧を測りましょうね」とされるがままになっていたのですが、計り終わった際「あら、ちょっと高めですね」と言われました。156/90でした。気の小さいオジさんなのです。

 緊張状態が続くと血圧よりも厄介なのは大腸に来ることです。外来でヤバイ患者さんが続いたときは決まって便意をもよおしてトイレに行きますが、出てくるのは水様便です。便臭もなく、ほとんど水。正常だと便とオナラのケジメがしっかりしていますが、この水様便は歩いている途中でガスとともにお漏らしするのでやっかいです。さいわいニオイがないので人に気づかれることはありませんが、濡れた下着をつけて歩く気分は最悪です。もっくん主演の映画『シコふんじゃった』で、緊張すると便意をもよおす竹中直人さん演ずる相撲部員には感情移入が強くてとても笑う心境にはなれませんでした。

 その他、じんま疹、腰痛など自ら様々な心身症を実体験していますが、どうしてそうなったかは自覚しているので慢性化することはなく何とか頑張っています。その経験は実際の診療にも役立ち、「僕も同じですよ」と患者さんと同じ目線で励ましています。