院長ブログ カーブ

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第511回 忙酔敬語 大腸カメラ顛末記

 「お父さん、それ癌かもしれないよ」

 若めの医者(私の娘です、ハイ)に言われました。

 今年の職員健診の結果、例年どおり軽度の貧血(女性なら正常です)と軽度の低タンパク血症でした。日ごろ「アンタは食べ過ぎだ」とツマに文句をたれられているので、娘の同情を引こうと思って検査結果を見せたところ、このような宣告を受けてしまったのでした。疑うとすれば大腸癌です。

 13年前、ツマのたっての要請で大腸カメラの検査を受けました。そのときオットリとした名医が「ポリープがありますね、良性だと思いますが念のため取りましょうか?」と言うので「お願いします!」とそれこそたってのお願いをしたのに、横にいた看護師さんが「先生、一泊入院することになっています」とキッパリ言いました。

 その後、血便もないのでそれっきり。医療界の異端児、近藤誠先生は『患者よ、ガンと戦うな』とか『健康診断は受けてはいけない』など多数の本を出しています。そのなかで「大腸ポリープの発見・切除は無意味」という文章があったので、それをツマに見せたりして放っておいたのですが、ここに至って「検査を受けて、検査を受けて」とツマの執拗な催促が始まりました。これは本当に際限がないぞ、と判断してすぐに懇意にしている消化器内科の女性医師に予約の電話をしました。

 常々、死ぬのなら癌でゆっくり死んでみたいと考えていましたが、これってけっこう難しいことです。私の同期で医者嫌いな男がいて、いきなり末期の胃癌で入院させられました。腸のバイパス手術を受けたり、抗癌剤を点滴されたりで、結局2年くらい生かされてしまいました。まさに地獄の地獄。自分のペースでラクに死にたかったろうにと気の毒でなりません。ただしこれは私個人の感想で、本人とご家族の心中は定かでありません。

 今回、癌死はあきらめて、手術も抗癌剤も受ける覚悟で望みました。それでも初診の血圧測定で151/90と看護師さんに「ちょっとお高いですね」と言われ、俺ってそんなもんなのか、と苦笑いしました。いつもは110~120で、長く立っていると100を切ったりする低血圧おじさんなのです。強がっていても実は小心者。これでバレバレでした。

 検査前日はサツマイモ、キュウリなど繊維質の物はダメ、常食の煎り大豆はもってのほか。朝早くに賞味期限の牛乳を400mlばかり飲んで、小さなパンをジュースとともに3個、10時過ぎにそうめんを3束ゆでて食べました。この調子だといくらでも食べ続けるぞと危機感をいだき、マイバスケットに行ってハーゲンダッツのクラシカルタイプ6個入りを買って完食。さすがに胃がもたれて午後からは絶食で過ごしました。夕方、ラキソベロン1本全部と、夜にアローゼン1g飲んで寝ました。翌日の早朝に便意をもよおして大量の便をしました。その上さらに水溶性の下剤を10分毎に200mlずつチビチビと9回、計1800ml飲みました。13年前は2000mlだったような気がします。その間、15分毎に水様便が出ました。便はだんだん薄まり、最後はトイレにしゃがんだだけでオシッコみたいに透明な便がそれこそオシッコみたいにサラサラと出ました。これで準備完了。病院は近くでしたが、途中でもれてはマズイので生理用のナプキンをつけてタクシーで受診。

 結果は大腸が漢方薬のためかちょっと黒ずんでいるだけ。ポリープも3mmで取る必要なし。最後に女性医師は言いました。「佐野先生は腹黒いですね」 ヤレヤレでした。