御年82歳の山本先生が当直のとき、陣痛のため入院している産婦さんによく言っていた言葉。
「今日はヨーダがいるから大丈夫ですよ。良かったね」
ヨーダは知る人ぞ知るスターウォーズのジュダイのマスターです。小柄なエイリアンですが絶大な超能力の持ち主です。
山本先生も小柄で動きが機敏でお産の達人です。とくに吸引分娩に関しては私よりも上で、先生のおかげで多くの産婦さんが帝王切開を回避しています。
しかし、最近は「知る人ぞ知る」人がかなり少なくなり、ほとんどのお母さんが「この医者、何言ってるんだろう?」とポカンとした顔をするようになりました。
そりゃあそうだろうね。スターウォーズのシリーズが日本で公開されたのは、私が医者になった頃で、それから40年以上もたちました。エピソード4から始まりエピソード6でひとまずメデタシメデタシとなりましたが、その後、CGが取り入られてエピソード1からエピソード3まで制作されました。これで終わりかと思いきや『フォースの覚醒』をきっかけに新しいシリーズがスタートしました。その辺からヨーダの出番はなくなり、さらにはシリーズの人気もひと頃よりは盛り上がらなくなり、とうとうヨーダを知る人も少なくなったのでした。
こう書くといかにも私がスターウォーズにハマっているようですが、実はそうでもありません。しかし、昭和54年にはじめてエピソード4を見たときは、その目まぐるしい映像にビックリしました。とくに感心したのは帝国軍の戦闘機の翼が縦についているのに対して共和国軍ではX型で、ヒッチャカメッチャカな場面でも敵と味方の区別がはっきり分かり、なかなか考えているなあ、と思ったことでした。
内容はバカバカしく、エピソード4でオビ=ワン・ケノービを演じた名優アレック・ギネスが「あんな映画に出るんじゃなかった」と後悔するほどでした。
しかし、たまにタメになるセリフも飛び出します。ルーク・スカイウォーカーがデス・スターに突っ込むとき、心の中に死んだオビ=ワン・ケノービの声がささやかれます。
「計器に頼るな、フォースを信じろ」
臨床ではまず「直感を大事にしろ」と言われますが、まさにそのまんまです。
ダース・ベイダーがルークに「そうだ、憎め憎め、その憎しみがダークサイドへの道につながるのだ」とそそのかします。シリーズのはじめはダークサイドは「暗黒面」と字幕に書いていましたが、今ではダークサイドが一般社会でも使われるようになりました。そうそう、フォースも最初は「理力」と字幕に出ていました。字幕翻訳家も大変でしたね。ダークサイドの反対語は?とネットで調べましたが、はっきりしません。どのシリーズが忘れましたが、皇帝かダース・ベイダーが「good side」とつぶやいたのを聞いたような気がします。私の英語力なので断言できませんが、よくも居直ったものだと呆れました。
シリーズ全体の感想。どうしてそこまで戦うのか分からないということ。帝国軍の悪辣の極めつきは、惑星ごとビームか何かをあてて一瞬に破壊してしまう場面です。エピソード4と『フォースの覚醒』で2回ほど見ましたが、実にイヤな気分になりました。スペースオペラなんだからそんなにムキになるなよと言われそうですがイヤなものはイヤです。