スクラブとは半袖で首元がVネックになっている医療用白衣のことです。白衣と言っても近年は上から下まで白の白衣を着ている医師は少数派になりました。平成17年から数年にわたって当院で研修医が実習に来たことがありました。青のスクラブと白いズボンという出で立ちでした。格好いい!と思ったので、それから私も青のスクラブを着るようになりました。ただしズボンは白のまま。その数年後からは冬場はやや厚めの紫のスクラブを着ています。紫のスクラブは女性っぽく見えるので、ティーンエイジャーの患者さんに「わー、お婆さんがいる!」と言われ、スタッフが大笑いしたことがありました。
学生時代、第一内科の研修で札幌同交会病院を訪れたとき、院長がわれわれ4人の学生の服装を見て言いました。全員半袖の白衣を着ていました。
「ネクタイをして長い白衣を着るのが医者の正式な服装だ。君たちは外科医や検査技師と同じだ」
外科医は緊急事態に備えてすぐ活動できるように半袖の仕事着を着ていました。そのハシリが1960年代のテレビドラマ『ベン・ケーシー』です。若手の脳外科医が活躍するドラマで、半袖の白衣を着ていたため、その後、半袖の白衣をケーシーと言うようになり、今でも通用する言葉となっています。
私は院長の言葉にヒエラルキーを感じて、何を偉そうに!と反発を覚えました。確かに第一内科の医者は腰が重い。それに対して、循環器内科はオットリと構えてはいられないことがあるため、教授が率先して丸首の半袖白衣を着ていました。もし内科医になるのなら循環器内科だと思いました。
このブログを書くにあたって札幌同交会病院の医師紹介を開いてみたら、ネクタイをしているのは顧問の先生だけでした。時代は変わりました。
スクラブの色もまさに色とりどり。10年ほど前に放映されていた『ギネ産婦人科の女たち』の藤原紀香さん演じる女医は上から下までほとんど真っ赤。キャラもテンパっていて、後輩の男性医師をしかりつけたり、バツイチのため自宅で幼い長男と2人だけで食事をするシーンは寒々としていて、こんな女性にはお近づきになりたくないなと思ったことでした。その後に話題となった『ドクターX』の米倉涼子さんも似たようなキャラを演じていました。いずれにせよ、生身の医師という感じはしませんでした。
その点、『誰よりもママを愛す』で、パパのおかげで破綻一歩手前からまともな医師に復活した小林聡美さんは、いかにも女医さんらしい雰囲気でパパ・ママ一家をささえていました。『チャングムの誓い』で実在の医女チャンドクを演じたキム・ヨジンさんは、画面に現れただけで「助かった!」と思わせるほどの存在感をかもし出していました。残念ながらチャングム本人は、ただ可愛いだけで、マヌケにしか見えませんでした。
私は物持ちのいいタチで、平成17年に購入した青いスクラブはまだ着られます。でもさすがにくたびれてきたので、昨年、上下とも紫のスクラブを一着買いました。別に紫がとくに好きなワケではなく、他に気に入った色がないのでそれにしただけです。本当はグリーンが欲しかった。今年、新しく購入した3着の手術着がまさにその色でした。すっかり気に入りオペ着としてだけでなく普段の診療にも利用しています。スタッフや患者さんからも好評で、いざとなればすぐに手術室にかけつけられるので重宝しています。