院長ブログ カーブ

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第478回 忙酔敬語 何とかなった。

 「先生、本当に大丈夫ですか?」

 今まで何度もスタッフから投げかけられた質問です。

 記憶のある範囲で言うと、第一が小児科の南部春生先生が退職された後の小児科空白期間。南部先生は子育ての大家で、赤ちゃんのあやし方など新米お母さんに親身になって指導されてきました。その精神はいまだに引きつがれています。

 私たちの世代の産科の教科書は、正常編、異常編、それに新生児編と3冊がセットになっていました。40年以上も前は、新生児は小児科医ではなく産科医が診ていたのです。ですから郷久理事長も私も、何か異常があればコドモックルにでも紹介するから何とかなるよ、と言って大して気にもとめなかったのですが、このような緊張感のない態度がかえってこんなことでよいのだろうか?とスタッフの不安をかりたてたようでした。

 たしかに時代は昔のように呑気に構えてはいられなくなりました。そんなある日、青森県立病院で未熟児をはじめ、あらゆる新生児を自分の健康を犠牲にしてまで診ていた笹島先生が当院に来てくれることになりました。笹島先生は、赤ちゃんの頭のてっぺんから足先まで、自身のマニュアルにそって実に丁寧に診察します。そして何か異常があれば必ずゲットします。いい加減に妥協しないで良い先生が来るのを待っててよかった、とつくづく思ったことでした。笹島先生は当院ばかりではなく、札幌中の新生児異常の早期発見とワクチン接種のもれのない医療を目ざして頑張っています。

 それから10年、またもやスタッフから不安の声がちらほら聞かれるようになりました。今度はわれわれ産婦人科医の年齢の心配でした。そろそろヤバイのではないか? 一般に勤務医の定年は65歳で、郷久先生はとっくに過ぎていて、私もその辺をさまよっていました。郷久先生は毎日ゴルフの打ちっ放しにはげんで、私も片道3.5kmの道のりを徒歩で通勤してさらに鉄棒や木刀を振って筋力トレーニングをこなし、二人とも体力には自信がありました。しかし、同期や先輩を見ると産科をやめて検診センターに勤務を変えたりしている医師が増えていたのは事実です。われわれが特殊だったようです。

 そろそろ若いドクター、それも出来たら女性医師に来てもらおうかとも考えましたが、郷久先生は大学時代から産婦人科関連の心身症を診る医師として知られています。そして弟子である私もそっち方面でも活躍しているので、保健センターから他院で出産したマタニティーブルーのお母さんがよく紹介されてきます。産婦人科は外科系で基本的に体育会系の医師が活躍しています。体育会系の医師は健康バカが多いので(失礼!実は私もバカです、ハイ)、メンタルに問題がある患者さんに対しては腰が引けるようです。

 そのため、大学などで研修を終えて産婦人科専門医になった医師からは特別な施設としてとらえられているようで、なかなか若い医師が来てくれませんでした。しかし、昨年から郷久晴朗院長が赴任したのをきっかに、心身症の患者さんばかり診なくてもいいんだ、と認識され、4月からは何でも出来る水柿先生(女性)が来てくれることになりました。そして麻酔科の豊山先生(女性)も加わり、さらに安全な手術が出来るようになりました。

 これでスタッフから、本当に大丈夫ですか?  と言う声は聞かれなくなりました。何とかなったのでした。しかし、近ごろ「佐野先生、まだ死んじゃダメですよ」とさらにたたみかけられています。これはラクチンです。死ぬまで生き続ければよいのですから。