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第475回 忙酔敬語 ミレーナが入らない!

 ミレーナは、黄体ホルモンを子宮内に装着して5年間徐々に放出させる器具です。もともとは避妊器具として登場しました。その効果は絶大で、銅つきリングで妊娠した患者さんを見たことがありますがミレーナではありません。しかし、値段が高かった。通常のリングが3~5万円のところ、8万円以上もしました。バイエル製薬が、岡山のセレブなクリニックではさかんに使われているので当院でも採用してくださいな、としつこくせまったため、4,5セット購入しましたが、あまりにも高額なので2本ほど賞味期限が過ぎてしまいました。まだ2か月しか過ぎていないし、どうせ5年間もつのだから誤差の範囲だと当院のスタッフにタダで挿入したところ、生理が軽くなったと喜んでくれました。

 その後、月経過多・月経困難症の病名で保険適応が認可され、1万円ちょっとで装着可能となったため、今度は札幌、北海道はもちろん、東北地方以北では一番使用される施設となりました。別に当院でなくても装着は可能なのですが、それまでのリングと比べて少しばかり面倒なので、遠方から受診される患者さんもいます。私は練習用キットで何百回も練習しました。

 ミレーナは他のリングと比べると直径が太いので、経腟分娩をしたことのない患者さんには気を使います。とくに帝王切開をした方は、子宮の傷跡にミレーナが入り込む可能性があるので要注意です。前処置としてラミケンという頸管拡張器を使用することがありますが、このラミケンすら入らない人がいます。秘策としてサイトテックというプロスタグランジン胃腸薬を挿入前30分に舌下する方法があります。プロスタグランジンは子宮頸管を軟らかくする作用があるので効果はてきめんです。ただしこの処置はサイトテックの保険適応外なので自費となり、バイエルもおおやけには奨励していません。

 ここまでしてもミレーナが入らない患者さんがいます。3人もお産した方がミレーナ挿入後5年たったので交換のために受診しました。抜くのはワケなく出来たのですが、不思議なことに子宮口が狭くなっていて新しいのが入らない。先ほど説明した方法を試みましたがダメでした。患者さんは40歳代なかばでピルは勧められません。そこで黄体ホルモンの内服薬ジエノゲストを処方しました。

 昔、黄体ホルモンだけで作られたミニピルが避妊に使われましたが、不正出血や避妊効果が不確実なため、日本で広まることはありませんでした。ジエノゲストは当時のミニピルとは違ったタイプの黄体ホルモンですが原理は同じです。黄体ホルモンの経口での効果は直接子宮内に入れるミレーナの200分の1と言われていますが、それでも低容量ピルよりは安全です。定期的な検査もとくに必要はなく年齢制限もありません。

 ミレーナが入らなかった患者さんはジエノゲストで、ニコニコするほど満足な経過をたどりました。ジエノゲストの先発品はディナゲストです。値段は倍近くもします。多くの患者さんに処方しましたが、不正出血などで使い勝手が悪く、費用相当の効果があるのかなあ、と毛嫌いしていましたが、安価なジエノゲストの出現で私の評価は変わりました。