院長ブログ カーブ

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第474回 忙酔敬語 映画『ドクトル・ジバゴ』

 中学生の時、授業の一環として年に1、2回、映画館での映画鑑賞がありました。1学年500名ほどの生徒がゾロゾロと10名の担任に引率されて市内の映画館に行ったのです。

 1年目の時は『サウンド・オブ・ミュージック』でした。この映画は「ドレミの歌」などで今でも人気で、テレビで放映されることがあるので、ご存じの方も多いでしょう。

 問題は中学2年の時の『ドクトル・ジバゴ』。3時間ものラブドラマで、それほどあからさまではないけれどベッドシーンが多々あり、これってオレ達にまだ早くない?ときちんとした性教育も受けていない中坊は思いました。きっと先生達が見たいので選んだのではないかと邪推しました。この考えは今でも変わっていません。

 先月、ヒマをもてあましていたら、BSプレミアムでノーカット放映をしていたので半世紀ぶりで見ました。上映時間197分!とにかく長かった。落ち着きのない中坊達がよくおとなしく見たものだと、あらためて当時の自分たちの忍耐力に感嘆しました。

 監督は名匠デビット・リーン、主演はオマー・シャリフ、そして名優アレック・ギネスが脇をかためていました。アレック・ギネスはデビット・リーン監督の切り札で、『戦場にかける橋』で主演。『アラビアのロレンス』ではイラクのファイサル王子になりきっていました。オマー・シャリフも『アラビアのロレンス』ではアラブの族長を演じていましたが、もともとエジプト出身のアラブ人なのでさまにピッタリ。今度はロシア人役なのではじめは異和感がありましたが、独特の存在感でストーリーにとけ込んでいました。

 舞台は革命期のロシア。冬のシーンが多く寒々と芯から冷える思いでした。夏でも寒い釧路市立東中学校だったので、冷えはモロに伝わりました。今回のテレビ放映時も部屋は寒波のため冷え冷えで、寒さがよみがえりました。

 医師で詩人のユーリ・ジバゴと運命に翻弄されるララとの不倫的恋愛ドラマで、話自体はどうってことはないのですが、音楽「ララのテーマ」が素晴らしい。場面の変わり目に甘く切ないメロディーがこれでもかとばかり気分を盛り上げます。ようするにオペラみたいなものだったんですね。カメラワークも繊細で、ロシアらしい風景をシミジミと描き出していました。※ただし当時は冷戦のためソ連ではなくカナダなどで撮影されました。

 窓ガラスに凍てついた氷の結晶が春の訪れとともに溶けて、一面に黄色の水仙が咲き乱れるシーンには心底しびれました。そして「ララのテーマ」は音量全開。淀川長治さんは生前、「映画は映画館で見ましょうね」と言っていましたが、そのとおりです。大画面だからこそオペラになり、中坊は退屈もせずに最後まで文句もたれず見続けたのでした。テレビの放映では、楽しみにしていた氷の結晶と水仙の場面も迫力が今一つでした。

 デビット・リーンの作品はすべて大画面使用です。『戦場にかける橋』は5歳の時、父親と見た覚えがあります。全体のストーリーは理解できませんでしたが、列車が爆破された橋からクワイ河に落ちていくシーンは鮮明に覚えています。『アラビアのロレンス』もストーリー自体はバカバカしいのですが、谷の隙間をオスマン・トルコの戦闘機が出入りしてアラブ軍を襲撃したり、ロレンスが砂漠をさまよったあげくスエズ運河にたどり着き砂漠のど真ん中でいきなり巨大船が現れたり、大画面ならではの迫力でした。

 リーン監督は音楽に寄りかかること大でした。そのなかでも「ララのテーマ」の効果は映画の半分近くを占めていたのではないかと思います。やはりまさにオペラでした。