大型連休中は新コロナのせいでテレビは再放送ばかりで新聞はペラペラ。6月に参加するはずだった3つの学会もすべて中止。ヒマつぶしにルービンシュタイン奏でるショパンの夜想曲をくり返し聴きました。
スマホのイヤホンで聴くと、これがけっこう良いんですね。音がいきなり脳天に突入して来るので、40年以上も前にレコードで聴いたより素晴らしかった。14年前、可愛らしいワルツ風の第10番が無性に聴きたくなり、CDを購入して聴いたのですが、音は透明できれいなのはいいけれど雑音とともにコクまで消えてしまってガッカリでした。
今回はイヤホンですからコクは期待しませんでしたが、なんせ脳天直撃なので文句なし。ねっころびながらヒマさえあれば聴きました。夜寝る前にベッドで聴くと2,3曲聴いているうちに良い感じの眠気をおびてグッスリ眠れました。ユーチューブ「ルービンシュタイン夜想曲よしおかたろう」で第1番から第19番遺作まで聴けます。しかし映画『戦場のピアニスト』で有名な第20番遺作は入っていません。レコードを購入した際にも収録されていたのは第19番までで、解説には第20番以降は大した曲ではないので収録しなくて当然のようなことが書かれていました。しかし、学生時代にラジオNHK・FMでショパンの特集を聴いて、甘美で感傷的な旋律に魅了されました。あやしげな記憶ですが、ほとんどの作品はルービンシュタインの演奏だったようで、「これもルービンシュタインの演奏です」という解説を聞いたような聞かないような・・・。しかし、第20番遺作の演奏者は誰だか思い出せないけれど別人でした。ネアカのルービンシュタインはこの曲が嫌いだったのかしら? 彼のお気に入りは第5番で、アンコールのときによく演奏したそうです。確かに退廃的な第20番遺作とは正反対で第5番は健康的な曲です。
健康か不健康かという問題になると、ショパンは幼少期から病弱で39歳の若さで結核で亡くなっています。晩年になると心身ともに衰えていくのが夜想曲を聴いていても分かります。第1番から第10番まではまあまあ。第11番からだんだんあやしくなっていきます。旋律も不安定で病んでいるなあ、という感じが伝わってきます。音楽評論家のなかで評価が高いのは前半では第7番、後半は第13番です。両方とも短調から始まりますが第7番は優雅で豪華絢爛、かたや第13番は重厚ですが途中からヤバイ展開となります。
第13番を聴いていた昼下がり、突然、病魔が進入した瞬間を発見しました。ここでショパンはやられたんだ! 曲は荘厳で重々しい低音とキラキラとした高音の組み合わせから始まります。苦労はいろいろあったが充実した人生を歩んで来たんだなあ、という感じです。その後、長調に転調、やすらぎのひとときです。そのやすらぎはしばらく続きますが、途中から不気味な和音による音階、すなわち病魔がズンズンと侵入して来ました。やすらぎの長調と不気味な和音は短い間、交互にくり返しますが、やがて不気味な和音は曲全体を乗っ取り、高らかにフォルティッシモで勝利宣言をして、高音から低音へと流れ落ちて来ます。あまりにも景気が良いので病気にうち勝ったのかな?と思われましたが、不気味さはときどき姿を現し、はじめの旋律にもどってもどこか痛みが残っている印象を受けます。そして最終章へ。ルービンシュタイン特有の透明感あふれる低音から高音への音階とピアニッシモの暗いゆっくりとした和音3回で消え入るように曲は終わります。 病気が治ったんだか病気にやられたんだか分からない結末でした。