NHKスペシャルで、新型コロナウィルス対策に感染症専門の先生たちが寝る間も惜しんでカップ麺をすすりながら頑張っている姿を見て、あらためて頭が下がりました。
さいわい周産期関係(お産、妊婦さん、新生児)での犠牲者はご当地の中国でもマレだそうです。中国は信用できないと言う人もいますが、ヨーロッパやアメリカの報告を見ても、やはり不思議とポツリポツリとした症例があるだけで、それも軽症です。
亡くなった患者さんの年齢層のグラフを見ると、生まれたばかりの子供は最低で、年齢が上がるにしたがって増加し、70代、80代、90代と急上昇していきます。これって平均余命の真逆のモードで、これで「さあ、大変なことになりましたね」と言われても、当たり前ではないか、とピンと来ません。お年寄りには誠に気の毒なことですが・・・。
〈ウィルスや細菌などの寄生者は、つねに新しいものがどんどん襲ってくるので、ある一つのタイプのウィルスに対して二重三重の万全の防御をほどこしても、別のタイプがやってくれば意味がなくなってしまいます。こういう事態に対処するには、どうしたらよいのでしょう? つねに新しいタイプの防御体制に作り変えるしかありません。そこで、有性生殖は、雄と雌の遺伝物質を混ぜ合わせることにより、つねに新しいタイプの子どもを作るので、こうした事態に対処するのに有利なのだと考えられるのです。〉
長谷川眞理子著『オスとメス=性の不思議』(講談社現代新書)の抜粋です。生物がどうして進化するのかについての基本的な理論です。別にある目的に向かって進化するわけではなく、やむにやまれぬ事情で進化してしまうのです。
新型コロナウィルスは妊婦さんや子供にはめったに襲って来ないので、別に新しいタイプの子供を待つほどではなさそうです。これで人口が減少する心配はないでしょう。
それよりも気になるのがパニックとも言える社会現象です。三月下旬、休校が長引いたため抑うつ状態になった女子高生がお母さんに連れられて来ました。家にいても何もすることがなく、友達にも会えず、食欲が落ちてションボリしていました。体育会系の部活をしていましたが、それも中止でテンション下がりっぱなし。
「君たちの年齢でコロナにやられた例なんか世界でもほとんどないよ。心配しないで外でジョギングでもしなさい」
それだけではお母さんが納得しないので、心も体も同時に元気にさせる加味帰脾湯を7日分処方しました。1週間後、女子高生は元気を取りもどしていました。お母さんの希望もあり、念のため加味帰脾湯を2週間分処方して治療は終了しました。
同じ頃、7歳と4歳の子を持つ妊婦さんが健診で来ました。
「お子さんが2人もいて行くところもなしじゃ、うるさくて大変でしょうね」
「本当にそうなんです」
「『コロナよりガキが暴れる春休み』ですね」
と、ヘタクソな川柳を披露したら「本当にそうです」と苦笑いしてくれました。
コロナ不況でここまで景気が落ち込むと、冗談ではなく自殺者まで出そうです。不景気もうつも英語で depression と言います。日本人で自殺する人は年間2万人います。ひと頃の3万人よりも減っていますが、この不況でまたもどおりの3万人になるかもしれません。医療崩壊が解決したら、できるだけ早く閉塞状態をとくべきではないかと考えます。