院長ブログ カーブ

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第430回 忙酔敬語 40日間

 2月はじめ、新型コロナウィルス感染者を乗せたクルーズ船が横浜港に着いたときの政府やマスコミの対応について、何か変だぞ、とイヤな予感がしました。

 2週間たっても乗客を下船させないため、乗客の動画を紹介しながらマスコミが「それじゃあ、あんまりではないか」的な報道を流し、そのせいかどうかは分かりませんが、政府が徐々に下船の許可を出しました。

 医学部の学生のとき、衛生学の金光教授と公衆衛生の三宅教授から、それぞれ別に「疫学」についての講義を受けたことを思い出しました。

 衛生学も公衆衛生も同じと言ってもいい学問分野ですが、太平洋戦争後にアメリカ司令部の命令で従来の衛生学に加えて公衆衛生が医学部の講座に設置されました。

 金光教授は謹厳実直な先生で、「中世のヨーロッパではペストが大流行したため、イタリアのベネチアは、外部から来た船舶に対して、ペストの潜伏期間と考えられていた40日間停泊する法律をつくったのです」とおごそかに言いました。

 かたやフランクリーな三宅教授。「40日もたてば危ないヤツはみんな死んじゃいますからね」と軽い調子で述べられました。

 同じことを講義しても、人柄によって違うものだなあ、と思ったことでした。

 検疫のことを英語で quarantine と言いますが、語原はベネチア語の40日間を意味する quarantena です。

 というワケでたかだか2週間で下船させるのはいかがなものか、と日本政府の対応に疑問を抱きました。少なくても1ヵ月以上は誰も降ろすべきではないのではないか。クルーズ船に乗り込んで行った検疫官が感染したというのも愚の骨頂でした。

 今さらこんなことを言い出すのは後出しジャンケンみたいですが、どうしても言いたかったので書いちゃいました。「物言わざるは腹ふくるるわざなり」で気分が悪いからです。

 ある情報番組を見ていたら、アメリカの軍隊だったら細菌兵器などに対するシミュレーションが出来ているので、むしろ自衛隊に任せた方がよかったのではないか、と軍事評論家が述べていました。

 本当かなと思って、その後、自衛隊関係者に確認したところ、一般隊員まで「感染症に対するシミュレーションは知っています」と教えてくれました。

 どうして政府が自衛隊に任せなかったのか? おそらくシビリアンコントロールが徹底しているため、自衛隊から提案することはできなかったのでしょう。

 しかし、政府の誰かが自衛隊のノウハウを知っていて、自衛隊に相談すればいいはずです。国の守り方を知らないにもほどがあります。

 私は憲法9条擁護派で、自衛隊の存在そのものについても憲法違反だと考えています。ようするにどんなことがあっても戦争で人を殺してはいけないと。医師の根幹である人の命を助ける、というのが身にしみているので、戦争している映像が流れると情けなくなってため息が出ます。

 しかし、相手がウィルスや細菌などでは別です。細菌にも生きる権利があるなんて誰も言わないでしょう。国防は対人間だけでないことを今回の新型コロナ騒動によって我々はしっかりと認識すべきです。