院長ブログ カーブ

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第429回 忙酔敬語 チーム医療

 『ドクターX』での決めぜりふ「私、失敗しないので」に異和感を覚え、参考までにと見た最終回も、すぐにチャンネルを切りかえました。

 医療現場では医師のスタンドプレーは不可能です。もともと原作はないそうで、いきなり脚本が書かれ、医療者は関与していないみたいです。やっぱりね。

 それに対して、海棠尊さんは作家で医師なので『チームバチスタの栄光』は医療者の間でも評判を呼びました。ただし、厚生労働省からの調査官が、デブの汗かきでアルマーニで身を固めているという、ありえない設定で描写され、ややドン引きました。しかし、映画では阿部寛さんが、ドラマでは仲村トオルさんがスッキリと演じていました。

 共感を覚えたのは器械出しのナースを重要視していること。難しい手術をするにはそれこそチームプレーが大切で、優秀なスタッフが必要です。北見赤十字病院に勤務していたとき、手術中、困ったなどうしよう、と考えながら後ろに手を伸ばしたところ器械出しのナースはとっさに彼女の判断で適切な器械を渡してくれました。手術の進行をしっかり把握してまさに司令塔でした。朝から晩までのオペ室勤務、さすがでした。

  産科医療現場『コウノドリ』の原作は各大学の産婦人科の図書館に購入され、テレビドラマでも俳優さんたちが細かい手術手技をマスターして我が業界でも好評でしたが、私の就寝後の午後10時放映なので見たことはありません。ときおりコウノドリ先生のピアノ演奏のシーンがあるそうですが、似たような先生がいたな、と思い出しました。

  新潟大学産婦人科榎本隆之教授はピアノの名手で、講演会のBGMとしてご自分の演奏された曲を流していました。テクニックだけでなく音色そのものがすばらしい。プロの演奏家としてもやっていけると思いました。ピアノは鍵盤楽器なので物理的に鍵盤を一定の力で引けば誰でも同じ音色を奏でるはずなのに、不思議と演奏者によって音色が異なります。良い音色を出すということはまさに才能です。懇親会で率直に「先生のピアノは音がきれいですばらしかったです」と言ったら、榎本先生はすなおに喜んでくれました。

 産婦人科開業医の神様、杉山四朗先生の一番のお宝はベテランの受付嬢でした。彼女は受付の窓口の下に主な患者さんの写真をズラッとならべて顔を忘れないようにしていました。2年ぶりに受診された患者さんにも「○○さん、お変わりありませんでしたか?」と声をかけました。もちろん患者さんは大感激です。

 当院の事務の女性たちは、日々、私の悪筆の解読に明け暮れしています。処方ミスがないのは彼女たちのおかげです。もういい加減に電子カルテを採用するつもりです。

 外来の看護スタッフも私のヨレヨレの説明を補助してくれています。よく横道にそれてしまうクセがあるのをしっかり修正して誤解のないように温かくささえてくれています。治療方針が決まったらキッチリとマネージメントしてくれるので後はお任せです。

 分娩はベテラン助産師がそろっているので、産科医が関与するのは仕上げの会陰縫合がほとんどです。大抵は傷が小さいのでラクチンです。もちろん吸引分娩や帝王切開は産科医が中心となりますが、「そろそろ吸引してください」とか「帝王切開しましょうよ」とか彼女たちのアドバイスで方針を決めることが多々あります。

 チームですからリーダーが必要です。当院では医師経営陣が担当していますが、別に医師である必要はありません。いずれにせよ主役は患者さん、あなたです。