院長ブログ カーブ

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第427回 忙酔敬語 地球は丸い

 「何を今さらバカなことを」と思われるかもしれませんが、まあ、聞いてください。

 12月下旬から1月上旬まで、札幌は日の出は午前7時ころで日の入りは午後4時ころ。そのあたりの1ヵ月間、その時刻は大きく変化しません。それが1月下旬から2月に入る時分から急に日の出は早くなり日の入りは遅くなります。

 スマホの日の出日の入りの時刻を確認すれば誰でも分かりますが、私は朝5時20分過ぎに家を出て6時10分に職場に到着するので、日の出に関しては体で分かります。

 1月中旬までは家を出るときも到着するときも真っ暗ですが、2月下旬では真っ暗の中を出発して、途中、東の空が明るくなり、到着するときは完全に夜が明けています。西に月が見えるときは柿本人麻呂の歌が思い浮かびます。

 東(ひんがし)の 野にかぎろひの  立つ見えて 

 かへり見すれば 月傾(かたぶ)きぬ

 こんな体験をしているのは俺ぐらいかな、とトクした気分になります。早寝早起きは遺伝を含めた体質的なものなので、朝がダメという人に強制するのは無理というもの。でも、季節の移り変わりの微妙な変化を楽しめないは気の毒なことです。

 さて、日の出日の入りの時間が急に変化するようになった2月中旬に気づいたのですが、やはり地球は丸いのではないか? 冬至あたりでは地表は太陽に対してかなり傾いていたのに、2月からはその傾きが緩くなり、日の出日の入りの時刻は急に変化します。こうした変化は地球が丸いことからきたものです。

 地球が丸いということは頭の柔らかい古代のギリシア人はとっくに気づいていました。さらにエラトステネスは地球の直径まで計算してしまいました。しかし、中世になるとその成果は忘れられました。コロンブスは地球はもっと小さいものと認識していたため、死ぬまで発見した土地はインドの一部と思い込んでいました。だからアメリカの先住民はインディアンとかインディオ呼ばれているのです。

 19世紀のアメリカの作家、エドガー・アラン・ポーは卓越した想像力の持ち主でした。気球で天高くまで昇った男の体験談を書いて、地球は凹んで見えると語らせていました。地球はあまりにも大きいので、いくら高くから地平線を見ても、そこは気球と同じ高さに見える。それに比べて足下に見える地表はそれこそはるか下なので相対的に地球は凹んで見えるのである。実際に飛行機に乗って景色を見てもこんな体験をした人はいません。ポーの創作した体験談は想像力の産物ですが、笑ってはすまされない気がします。

 夕暮れの羽田空港に着陸して、はるか西にオレンジ色にそまった富士山を見たとき、「あれが日本一高い山なのか。それにしてはずいぶん低くノッペリしてるなあ、地球って本当は平べったいんだ」と思ったことでした。世に売り出されている地球儀は、リアルに見せるために凸凹に作られていますが、本当はツルツルに仕上げた方が正確なのです。

 地球が丸いなんて、丸く広がる水平線を見れば分かるではないか、月食を見れば分かるではないか、はるか彼方の船が船体から消えていくのを見れば分かるではないか、と人は言いますが、これらはすでに丸いと知っているから言えることだと思います。