佐野理事長ブログ カーブ

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第424回 忙酔敬語 久しぶりの蕎麦

 篠路1条にある十割蕎麦「なみ喜」。おすすめは何と言ってもデカ盛りの板そばです。「並」で「ざる蕎麦」の1.5倍、「中」で同2.0倍、「大」2.5倍、「特」3.0倍。そもそもこの店の「ざる蕎麦」自体がそこらの店の「大ざる」相当なので、「特」になると当院のスタッフが夫婦で食べても残してしまったそうな。

 そんな「特」に挑戦してみました。

 炭水化物ダイエットを始めて6年近くになります。ご飯、パン、ラーメン、その他パスタなどが標的となりました。そのなかには月に3回ほど食べていた「大盛り蕎麦」も含まれました。蕎麦、とくに盛り蕎麦は幼少期からの好物です。お蕎麦屋さんの店主は急に姿を見せなくなった私のことを心配したらしい。イヤイヤ元気です。まさか「これからダイエットに入りますので今後の出入りはありません」なんて挨拶するのも変です。おかげさまで1年足らずで76㎏から68㎏のダイエットに成功してリバウンドはありません。

 それがどうして「特」に挑戦したかというと、魔が差したと言うほかありません。昨年の医局へのお歳暮や年越しメニューでお腹いっぱい食べることに目覚め、鏡開きではあんこ餅ときなこ餅を小5個ずつ、ふつうのお餅にして5個も食べてしまいました。他に食べる人がいなく、そのままでは硬くなってしまうので、貧乏性なタチで一気に食べちゃいました。どうせその気になれば体重はいつでもコントロールできる、その前に伝説の「板そば」もついでにやってしまおう、ということになったのでした。

 日曜日の昼過ぎ、店はほぼ満員でカウンター席に案内されました。しばらくして運ばれてきた「特」を見てドン引きました。広い板に山のように盛られた黒い蕎麦。食べても食べても山は小さくなりません。半分食べたところでお腹はほぼいっぱいになりました。ここで残しては男がすたる。さらに続けました。残り3分の1からは格闘技の様相を呈してきました。お蕎麦はツルツル食べるものですがツルツルいかない。食道あたりで引っかかってしまいました。咽つまりです。

 正月の朝、NHKで「65歳以上のお年寄りはお餅の咽つまりに気をつけてください」と放映されたのを御年80歳の山本先生ときなこ餅を食べながら見ました。食べ終えて「お互い無事に死なないで済みましたね」と言って笑ったものですが、蕎麦で咽つまりです。途中、そば湯を飲んで再開。ゆっくり落ち着いて続けました。

 昔、人間国宝の柳家小さんは『時蕎麦』の枕で「よく蕎麦の通ってぇのは噛んじゃいけねぇ、咽ごしで味わうもんだってぇ言いますが、本当はよく噛んだ方がウマイですね」と言ってましたが、別な意味でその通りになってしまいました。

 また、ここの蕎麦つゆは猪口に一杯だけ。これも小さん師匠が言った言葉。「ある蕎麦通が最期に言ったそうです。死ぬ前に一度でいいからタップリつゆを附けて食べたかった」。私は通でないのでつゆ猪口のお代わりをしました。  何とか一本も残さずに食べ遂げました。店を出るとき、今後一年は蕎麦は食わないぞ、と思いましたが、蕎麦は消化が良いそうで、2,3時間もしたらまた食ってやろうという気になりました。その決意を確認すべく、1週間後に今後は「大」を注文しました。親切なおネエさんがジジイに見えた私に(本当にジジイですが)「けっこう多いですよ」と注意してくれましたが、「この前、特盛りを平らげた」と胸を張りました。バカですね。